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Encounter_10
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ふっと甘い香りが鼻を掠めた気がして、俺は薄らと目を開いた。
カーテンから零れる朝日が丁度顔を照らしていて、眩しくて何度か瞬きを繰り返す。
ソファで寝てたせいか、はたまた連日の労働が身体にきてんのか、身体を動かすとあちこちがぽきぽきと悲鳴をあげた。
「いてぇー…」
ゆっくりと身体を起こす。
ぐっと背伸びをして、欠伸を一つ。
それからソファから足を下ろそうとして、「うおっ」と情けない声を出してしまった。
雪がリビングの隅っこ――俺が寝てたソファの横の隙間で膝を抱えて蹲ってたからだ。
雪は俺の情けない声に猫耳をぴく、と反応させて、ゆっくりと顔を上げた。
その顔は、昨日より隈が酷く見えて。
それに顔の赤さも昨日より増して見える。
「だ、大丈夫か、雪!?」
「……大丈夫、です……放って置けば、すぐ……」
「いやいや、ちゃんと薬飲んで寝てろ!」
馬鹿な事を言う雪をひょいと抱き抱えて、直ぐに寝室へと運ぶ。雪の身体は異常に熱くて、そう言えば昨日薬を飲ませて無かったと気付く。
昨日から熱があるって気付いてたのに、申し訳ない事をした。
ベッドに雪を下ろして、薬棚から冷えピタと風邪薬と体温計を取り出して、それから水を入れて――
そう言えば昨日、足をひょこひょこさせてたから…多分捻挫だろう。湿布と包帯を取り出して、トレーに全部を載せて寝室に戻った。
四肢を投げ出してぼんやりと天井を見つめる雪に、体温計を手渡す。
これは使うのに慣れてるらしく、体温計を受け取ってボタンを押し、脇に挟む。
その間に冷えピタを雪のおでこに貼って、取っておいたみかんゼリーを開ける。少しスプーンに取って雪に差し出すと、雪は少しだけ唇を開いた。…これじゃ入んないぞ。
「ほら、あーん」
自分もぱか、と口を開いて見せる。
つられて雪もあーと大きめに口を開いてくれた。そっとゼリーを流し込むと、少し咀嚼してからこくんと喉を鳴らした。
…何だろう、この母性が擽られる感。可愛いとすら思ってしまう。
とにかくそれを何度か繰り返してゼリーを空にさせてると、ぴぴっと体温計が測り終えた音を立てた。
脇から体温計を抜くと、画面に表示された数字は――40度!?
「滅茶苦茶高いじゃねーか」
どのくらい長い時間雪の残る寒い街を走ってたのか…こんな温度は実際に見るの初めてだぞ。
病院に連れて行ってやりたいが、この猫耳と尻尾で何言われるか分からないし、貴重なサンプルだーとか言って人体実験されても困る。
市販の薬が何処まで効くか分からないが、何もしないよりはマシだ。
雪の身体を、背中を支えながら起こす。
15歳以上は2錠か……
「雪、今いくつだ?」
「…多分、12…」
やっぱり中学生くらいか。風邪薬のパッケージから1錠だけ出して、雪の口の前まで持っていく。
だけど、雪はそれを見た瞬間怯えた様な表情で固まってしまった。
はっと熱い息を一つだけ吐いて、固く口を閉ざしてしまう。
「雪、」
幾ら呼んでも、雪は顔を伏せってしまって埒が明かない。
強引にでも飲ませようと、ぐっと肩を掴んでこちらを向かせると、雪は濁った目を俺に向けた。
それから熱に浮かされた様に、ぼんやりと呟く。
「……ゃ、だ…も、キモチ、いいこと、…したくな……」
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