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Encounter_11
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その悲しい言葉と共に、ぽろ、と伏せられた目から一筋の涙が零れた。
と同時に、雪からぶわっと甘い香りが漂ってカッと顔が熱くなる。
まただ。何なんだ、これ。
雪の風邪がうつったのか…?
…いやそれとも、雪にそんな事を思わせてしまった人間達への怒りか。
「…そんな事しない。な?」
薬を見ただけでそう思ってしまう雪に、そんな目に合わせた人間に嫌悪感が湧く。
まだほんの子供なのに。同じ人間として、反吐が出そうだ。
だけど幾ら「違う」と言っても雪は怖がって猫耳を伏せてしまい、酷く怯えられてしまう。
唇を強く噛んで拒否して、終いには噛み過ぎてその唇から血が出るほど固く口を結び続けた。
そのくらい、嫌な事があったんだろう。その怯え方は、薬が必要だと分かってても躊躇うくらいだ。
…そうだと分かってても、俺は甘い香りのせいなのか、はたまた熱があるのか、頭がぼんやりとしてきてて。
雪の唇から血が零れるのを見て、保っていた何かがぷつんと切れてしまった。
「……雪、」
小刻みに震える雪から手を離し、手に持っていた薬を、――雪ではなく俺が口に含む。
そのままトレーに置いておいた水も一緒に口に含んで、ゆっくりと雪に、顔を近づけた。
驚いた表情の雪の顔が、間近にある。
酷く熱い頬にそっと手を添えると、自然と、雪の細く綺麗な唇がふっと緩んだ。
そのまま雪の唇に俺の唇を重ねて、上から水と、溶けかけの薬を雪の口の中に流し込む。
「ふ…っぅ」
水の冷たさか、はたまた恐怖か。びくっと一瞬身体を引いた雪の顔を固定するように、両頬にそっと手を添えて雪の顔を上向けに固定し、口内の水を全て流し込む。
驚くように開かれてた瞳の瞳孔がきゅっと絞られて、それからそっと閉じられて、まるで抵抗無く俺の舌を受け入れてくれてるかの様に錯覚してしまう。
こく、こく、と必死に飲み下す雪の姿に、征服欲が募る。
お互いの睫毛、柔らかい唇、熱い舌がそれぞれ触れ合った。
美しい白い肌が目に入って、それから雪の手が、両頬に添えた俺の手に重なって――
時間にすればほんの僅かな瞬間の、その倒錯的な雪に、頭がくらくらした。
「ん…は、…っ」
流し込む為に差し入れていた舌で、雪の柔らかい唇をなぞる。溢れた血を舐め取り、もう一度、薄く開いたままのその唇に差し込もうとした――その瞬間だった。
かくん、と糸を切ったように雪の身体が崩れ落ちて、ハッと意識が引き戻される様な感覚になる。
どうやら眠りに落ちた…と言うより、気絶してしまったらしい。
体を支え直して、ベッドに寝かせ直して、布団を掛け直す。
雪は熱く息を吐くものの、もう苦悶の表情は浮かべていなかった。熱も下がるだろう。
ふらふらと寝室から出て行くと、冷えた空気で夢うつつな自分の頭と火照った身体が、段々と冴えていった。
「……あああ…」
情けない声が出て、ズルズルと腰が抜けて座り込んだ。
そして、自分の馬鹿な行動に、このあと2時間は頭を抱える事になる。
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