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Encounter_20
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それから、俺は気まずい雰囲気のままわしゃわしゃと雪の頭を泡立てていた。
細くキラキラと輝く髪の毛が絡まないよう、それと伏せられた耳の中に泡が入ってしまわないように気をつけながら 泡立てて、熱くない温度のお湯を掛けてやる。
その間雪はずっと、俯いたまま何も言わずにされるがままになっていた。そのほんのりと赤い横顔には動揺と、それからやっぱりどこか焦りが見える。
……本当に、俺は何をやってんだ。
雪のトラウマかもしれない行為を何度も強いて、雪に不要な謝罪までさせた。悪いのは完全に俺なのに…
「……身体は、自分で、……」
「あ、あぁ。一人で大丈夫か?」
「大丈夫です、ありがとうございます……」
折角慣れていた話し方も、また元の敬語に戻ってしまっている。俺との壁を作っているのは明らかで、心配だからと食い下がることなんて出来なかった。
先に浴室を出て雪の為のタオルや着替えを用意しながら、嫌でもさっきの光景を思い出してしまう自分への嫌悪感で吐きそうになる。
俺が1番嫌う行為を、まさか自分がするなんて。
「……っ、」
くしゃ、と髪の毛を握る。その手はみっともなく震えていて、ふはっと自嘲の笑みが洩れた。
なにビビってんのか。へこたれてる場合じゃないだろ。
そう言い聞かせて、俺は首に掛けたタオルでわしわしと頭を拭きながらあの男の電話番号へと電話を掛ける。
何度目かのコールでやっと聞き慣れた声が出るが、こいつが3回目までで出ないとは珍しい。
「もしもしコタ、忙しかったか?」
『あー、ちょっとな!それよりどうしたんだ?』
「ハッキングしてもらいたいサイトがあるんだが、頼んでもいいか?」
『おっけーおっけー、…だけど今ちょっと忙しくてさ。
急ぎの案件か?』
「いや、今回は俺の個人的興味だ。ゆっくりでいいから頼むな、URL貼っとく」
『まぁた変な事に首突っ込んでんのか?
…はいはい、了解!じゃあ、また後で。』
トントン拍子に話が決まって、男──改め腐れ縁の友人、戌井小太郎は、一方的にぶつりと電話を切った。
何故か焦ってるみたいだったが、急な仕事でも入ってたんだろうか?
まぁ、こいつに任せておけば遅くとも1週間ほどで調べてくれるだろう。
…それまでは、雪を預からなきゃいけないことになるが。
雪が上がったら、きちんと謝ろう。
あと1週間、もしかしたら解決策が見つかればお別れになるかもしれないのに、この気まずいままさようならは嫌だしな。
もう二度と雪に手を出さない、嫌がることはしないと、
ハッキリ伝えなければ。
──そう決心した、その時。
ドシャッと、浴槽から何かが倒れる音がした。
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