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ヤマアラシⅡ
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またひとつ、またひとつと刺してしまう。
ひとのこころの痛みを痛感するのはそれを刺してしまったあとからだ。
そのときはひたすら臆病に俯いているから、相手の傷口に目がいかない。
またひとつ、またひとつと突き刺さる。
そうしてそれを自覚したとき、僕のこころにも同じものが突き刺さる。
きっとこの無数の針は、さながら裁縫道具の針立てのように出来上がってしまったのかも知れない。
……。
今もこうしてひたすら臆病な僕は、携帯のそれを含めた自室の時計をすべて取り除いたり狂わせたりしてしまった。
だからはっきりとした時間は判らないけれど、恐らく、約束の時間はもう。
またひとつ、またひとつと時を刻む時計の針。
現状から逃れるためにも過去の思い出にすがろうと、僕はふたたびスマホ画面を覗き込みながら夜の繁華街を歩き続ける。
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