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兄と弟
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『お前が好きなんだよ!』
そんな台詞よく言えるなぁ、と今流行りの恋愛ドラマを見ながら煎餅をかじった。
醤油風味の海苔付き煎餅はバリボリといい音を奏でながら俺の腹へ収まっていく。
机に頬杖を付きながらテレビ画面に映る最近よく色んな番組で見かける俳優といつまでも綺麗なベテラン女優のやり取りを聞いていた。
『もう離さないから、お前のこと』
『……うん、離さないで』
うわぁ、ベッタベタですがなぁ。と思わず顔をひきつらせる俺、瀬戸 伊織(せと いおり)が再び煎餅をかじろうとした途端、急にチャンネルが変わった。
さっきとはうってかわってお堅いスーツのお兄さんが原稿に目を通しながらニュースを読み上げている所だった。
「え~兄ちゃん今の見てたんだけどー?」
口を尖らせて不満げに言えばチャンネルを変えた張本人である俺の弟、ハルこと瀬戸陽翔(せと はるひ)が隣に座る。
「へぇ……じゃあ尚更変えるけど」
「うわぁ、ハルちゃんドSっ子ぉ……」
バリッと煎餅にかぶり付きジト目でハルを見る。けどハルはそんなの気に止めることもなく、ニュースを真顔で見ている。
サラッと柔らかそうな黒髪にすっと通った鼻筋、目は切れ長だが気だるそうな瞳だ。色も白くて本当にハルは俺と血の繋がった兄弟なのかと疑うと同時に劣等感もこんにちはだ。
劣等感と仲良くしたくない俺はそれと早々にばいばいをして、また煎餅を一枚手に取った。
「イオ」
「イオじゃなくてお兄ちゃん、だろー?昔はあーんなに泣きながら兄ちゃん兄ちゃん言ってついて回ってたのにさぁ」
「……言ってないから」
ハルは俺の食べかけ煎餅をひょいっと取り上げるとそれをバリバリと食べる。
「もー、こっちから取ればいーのに……」
むぅ、と口を尖らせて煎餅を袋から取り出す。醤油風味の海苔煎餅の次は塩味の煎餅。バリッと音を立てながら食べる。
「煎餅ってさぁ、この手に付いたのもうまいよなぁ」
「……じゃあ確認させて」
ハルは俺の手をガシリと掴むとその指についている煎餅の食べカスをペロリと赤く妖艶な舌で舐めとる。
「……っん、ちょ、ハル!ばっか、じゃねーの!舐めんなぁ……っ!」
「やだ」
まるで猫や犬がペロペロと舐めるようにハルの舌が指先を這う。
「ひっ、くすぐった……い、つーの!」
ベシッとハルのおでこを軽く叩けばやっと手は解放された。
「お前……動物じゃねーんだからさぁ」
「イオの美味しいから」
「え?マジで?手から出汁出てる?」
「うん」
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