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風邪
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「ん……」
目を開けると白い天井がぼんやりと見えた。まだぼやける視界を数回の瞬きでクリアにする。
俺どうなったんだっけ。バスケしてて、なんか色々考えちゃって、それからボールが飛んできて。
「起きた?」
気だるげな目がこっちを見る。案外真面目に着こなしている制服はまるで一張羅のスーツに見えてくる。
そんな椅子に座っているだけで絵になる男、ハルが俺にそう問いかけた。
「……なんで居んの、ハル授業だろ?」
「とっくに終ってる。今放課後」
「えっ、そんな寝てた?」
「寝てた。自分で熱あるの気づかないとか馬鹿?」
「ば!馬鹿って言った方がば、か……」
言い返そうとすれば熱でクラクラしてぽすん、と布団に倒れ込む。そんな俺をハルは呆れたように見下ろして、そっと頭を撫でた。
……気持ちいい、なんて思ってねぇもん。
「今日くらいは大人しくしてなよ」
「に、兄ちゃん平気だし、」
「はぁ」
ハルがため息をつく。鼻まで布団を被った俺にハルはデコピンの準備。
慌ててぎゅっと目を瞑って構える。けどぺち、と腑抜けた音が鳴ったそれは全然痛くなくて、恐る恐る目を開けて小さく首を傾げる。
「ばーか」
ぶわっと顔が熱くなる。違う、これは熱のせいだし。風邪引いてるから、そう!体が敏感なだけだ。
心臓が煩くて、煩くて、煩くて。必死に心の中で言い訳を重ねてハルから目を逸らす。
「……イオ、帰ろ」
すっと差し出される掌。昔は俺の方が大きかったのにいつの間にか手も身長もハルの方が大きくなっていて、成長をひしひしと感じる。
そっと掌に自分の手を重ねて小さく笑った。
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