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もやもや
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「……さーてと!そろそろチャイム鳴るし、行くかー」
「へーい!」
ぱんぱん、と制服のズボンに付いていた埃を叩いて立ち上がる。
「ねー、はるひのにーちゃんって名前なんてーの?」
にかっと笑う明くん。このタイミングで?なんて思ったけどはるひのにーちゃんじゃ呼びづらいよな。
「イオリ、伊に織で伊織」
空中で指を動かせて伊織と漢字で書く。
「伊織センパイね!おっけーおっけー!」
明くんはぐっと親指を立てる。
センパイって言葉が言い慣れていないようで、それがまた彼らしくて笑ってしまった。
ふと見上げた時計がカチリ、と音を立てて針を進めた。授業が始まるまであと2分。
「うわ、時間ヤバっ!!」
俺達は慌てて資料室から飛び出す。焦る俺とは対照的に明くんは楽しそうにケラケラと笑っている。
「あといっぷーん!」
「うわぁぁ!俺ぜってー間に合わねぇじゃんかー!」
「ごしゅーしょーさまっす!」
明くんはぶんぶんと手を振って俺を見送った。くそっ、自分はすぐそこに教室があるからって余裕ぶりやがって!
「伊織センパーイ!またね!」
後ろから明くんが叫ぶ。振り向けない俺は前を向いて全力疾走しながら手をひらひらと振った。
結局、授業には間に合わなくて浅沼せんせーにちょっくら小言を言われたけど、それだけで済んだからまぁいいか。
須崎の背中を殴ってから席に着く。えっ、と声を上げた須崎は無視だ。
「………………痛い」
俺は胸辺りのワイシャツをぎゅ、と握ってぼそりと呟いた。
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