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分からない
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「陽翔、無理してたんじゃないんですかねぇ」
「……は?」
無理ってなに。
その言葉の意味が知りたくてじっと実くんを見つめる。いや、実際は睨み付けていたのかも知れないが。
「だってたまに言ってましたよ?"何でイオは兄なんだろう"って」
がつん。がつん。がつん。
強い衝撃、頭をとんかちで殴られたようなそんな痛み。
「他にも"我慢は大変"とか"ムカつく"とか、あれ全部瀬戸先輩に向けていってた言葉……って聞いてます?」
ハルの兄は俺で、俺がハルを守らなきゃってずっとずっとずっと思ってた。
あの時から俺らは二人ぼっちで、ハルの理解者は俺で一番は俺でハルの隣は俺だけのものだった。
"だった"なんだよな。
今では過去形でしかない、だったなんだ。
全部全部全部全部全部、だったなんだ。
ハルの兄は俺じゃなきゃ良かった?
じゃあ俺はずっと、空ぶってたってこと?
笑えねぇじゃん、そんなの。
「実くん」
「?はい」
「俺って何なのかな」
「何って……瀬戸先輩じゃないですか、いきなり何です?」
「そうだよな、うん、そうだよなぁ」
また、分からなくなった。
結局俺は、何なんだろう。
ハルの兄じゃない俺はなんなんだろう。
ただの瀬戸伊織。
二人ぼっちの世界から放り出された、一人ぼっちの人間でしかない。
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