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矛盾だらけ
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「なんで泣いたの」
するりと親指が目の下をなぞる。答えろ、そんな威圧とは異なる優しい触り方。
なんで、なんでそんな触り方するんだよ。
「答えて、お願いだから。俺に、言って」
言えるわけないだろ。
ハルを想って泣きました、なんて。
自分から別れを告げた俺が言えたことじゃない。
「……ハルには関係ねぇから」
本音を押し殺して、俺はまた嘘を突きつける。
「関係ないって、なに。兄の心配して何が悪いの?兄弟なのに関係ないって言えるの?」
兄弟なのに?兄なのに?
なにそれ。なにそれ。なにそれ。
「……て……ねぇだろ……」
「は?」
「っ、兄なんて思ってねぇだろ!!」
実くんに聞かされた言葉を聞いていなかったらきっと、冷静になって話し合えたかもしれない。俺がもっと素直になれていたらハルと仲直り出来たかもしれない。
全てが空回りして、歯車が噛み合わなかった。何もかもが上手く行かなかった。
だから、こんなことになってしまったのかもしれない。
「なんでイオが兄なんだろうって思ってたんだろ?ごめんなぁ、気付けなくて。こんな出来損ないの兄、嫌だったよなぁ」
「何言ってんの?俺は、」
「我慢させて、ムカつかせて、ごめんな?俺……馬鹿だから言われないと分かんないんだよ」
ぽたぽた、服にシミを作るそれを堪えることも言葉を止めることも出来なくて、今まで抑えていた心が止めどなく溢れ出す。
「ハルのこと、誰よりも分かってるつもりだった。でもそれって"つもり"なんだよな。本当は何一つとして理解してなかったんだよな……ごめんな、こんな兄ちゃんで、ごめんな……ハルのこと、好きになって。迷惑だったよな、ごめん、ごめん……っ」
今日だけ、そんな想いを胸に俺はハルに抱きついた。目を見張って驚いた顔をするハルをさらにきつくきつく抱き締めて、すがるように泣いた。
「明日になったら、戻るから……っ全部、全部元通りに戻すからっ、ちゃんといいお兄ちゃんになるから……っ、だから、だから、嫌いにならないで……兄としてだけでいいから、好きでいて……っ」
怖かった。
ずっとずっと、ハルが俺から離れていくその日が来ることが怖くて怖くてたまらなかった。
だから、弱い俺は自分から離れることでその恐怖を消そうとした。だけど、そんなのただの逃げ道でしかなくて……なんの解決にもなっていなかった。
俺は結局、何一つとして消せなかったんだ
恋人としての想いも兄としての想いも家族のしての想いも、全部。
ねぇ、はる。
おれね、はるのこと、ずっとずっと前から……だいすきだよ。
だいすきだから、きらいにならないでね。
いい子になるから、すきでいてね。
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