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prologue3
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寮までの道は、体育館から徒歩10分ほど。その間、巨躯の遠山の後ろをついていく形で人並みを避けることができた。
二人して、特に会話はない。遠山の表情も、先に立って歩いているのでわからない。
会った当初からしどろもどろなオレの言動に呆れているのだろうか。
よどみなく歩く後ろ姿をみながら、ふと思った。
普段は、そんなに言葉がつかえることはない。というより、必要な事以外話さないだけだが。
中学、高校も基本は一人でなんでもできたし、色々と一人の方が気楽だったこともあったから誰に何を言われても、「いらない」、「やらない」、「必要ない」の言葉で対処してきた。
人と関わるのはしんどい。それにいつか自分が馬鹿を見る。そう考えてきた。
だから、遠山ともこの縁で終わるだろう。そう自分でも思った。
体育館から、一度公道へ出て信号を渡る。あとは学生用の繁華街を少し外れて歩くと、そこに寮がある。
見た目は高層マンションのようになっている10階建て。本当に学生の寮なのか、と思うところはある。
でもまぁ、設備は整っているし、文句は言わない。
ところで、4学部にはそれぞれ最寄りの寮があって、ここは心理学部の寮だった。
正確には、心理学部に一番近い寮である。寮生は、どの寮に入るか、自分で決められるが、基本はやはり、自分の在籍する学部に最寄りのところになるので、心理学部の寮、となっているらしい、というのは、入学式より少し前に入寮し、先輩たちが話してるのを聴いた。
二人して寮のエントランスに入る。エントランスには5台のエレベーターがあり、その横には階段もついている。
ここまで来てようやく、遠山は振り返った。
「君は、何階?」
「・・・・オレ、5階」
「そうなんだ。俺は7階なんだー」
聞いていない、とか思いながら曖昧に頷く。そのまま、ちょうど到着したエレベーターに二人して乗り込む。
ほかには誰もおらず、少し気まずい空気が流れる。
「あ、そういえば名前聞いてなかった」
「・・・宮野一哉、です」
「宮野君か、よろしく!宮野君は、県外から来たの?」
「・・・そう」
「そっか。俺も県外からで、知り合いとかもいないんだ。」
「・・・そう」
「うん。だから、その・・・同じ学部だし、よかったらこれから仲良くなれたらな、って思ったりするんだけど・・・・」
「・・・・・・・・」
おもわず無言で見上げると、向こうもこちらを見下ろしてきていた。
反射的に目を背ける。それと同時に5階に到着する。
「・・・・今後機会あればね。」
それだけ言って、そそくさとエレベーターを降りた。
少し振り返ると、笑顔で手を振る遠山がいた。
各階の部屋数は25部屋。オレの部屋は515号室。部屋割りは完全にランダムで、同じ階に上級生も混じっている。
鍵を開けて、部屋に入り込むと、そのまま備え付けのソファまでいき、倒れこむ。
「はぁーーーーーーーーーー・・・・・」
長いため息をついてから、仰向けに体勢を変える。
結局は、彼はなんだったのだろうか。同じ新入生で、同じ学部生。おまけに初対面。なのに馴れ馴れしく人の心に入り込もうとする、よく分からない存在。
「仲良くなれたら、か・・・てかそもそも同じ学部でもそうそう会わないだろ・・・」
そう呟いて、もう一度大きくため息をつくと、そのまま部屋着へ着替える。
春先にしては暑いので、しばらくはタンクトップでも大丈夫だろうと考えて着る。
そのまま晩飯の準備を始める。
自炊の方が安上がりになるので、寮に入ってからは3食自炊だ。元々料理ができる方なので、苦ではない。
ただ、今日は疲れたので簡単にパスタをアルデンテに茹でて、そのまま適当にバターで炒めたベーコンや野菜を刻んで和える。あとは塩コショウで味を整える。
食事を済ませてから食器を洗い、風呂を沸かす。待つ間に、明日から始まる講義の時間をチェックする為にパソコンを開き、望月大学のHPへログインする。
学生専用のアカウントでログインすると、個人のタイムスケジュールや講義の時間、場所、休講有無などを確認できるほか、学生同士、教授とのメールのやり取りも可能になっている。
学生同士だとスマホがあるし、あまりメールは不要なのだけど。
そうこうして時間のチェックがある程度終わったとき、風呂が沸いたので。パソコンはスリープにして入る。
「ふぅ・・・」
息を抜いてリラックスできる最良の時間の一つが入浴だ。
しっかり温まってから、風呂を出て、部屋着を着なおすと、そのまま残りの講義時間をチェックする。
「さっきは選択科目だったから、あとは必修だけ、と・・・・ん?」
スリープを解除してから講義時間をチェックしていると、パソコンにメールが届いた。
とりあえず開き、内容を確認する。
「宛名:宮野 一哉様
添付:なし
本文:本日は、入学おめでとうございます。こちらは、望月大学学生会です。
このメールは学生会から、成績優秀者の新入生皆さまへ送信しております。
この度、入学試験にて非常に優秀な成績で入学された皆様には、学生会へ参加いただきたく思っております。学生会への参入をいただければ、今後の学生生活での利便性が向上する特権を複数お持ちいただけます。
つきましては、明日の昼休み、部室棟1階中央にあります、学生会室までお越しいただきますよう、お願い致します。
なお、明日不参加であった場合は後日改めて参入の意思確認の為、日程の調整もしくは直接のご訪問をさせていただくことがございますので、ご了承ください。
敬具 」
「・・・・・・・・・・・は?」
おもわず声が漏れた。
折角穏便に卒業していと思っているのに、幸先が良いとは言えない、学生生活の始まりだった。
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