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出会い(リンside)
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周囲の植物がブワッと一斉に芽吹くような、不思議な錯覚にとらわれた。
誰……?
漆黒のマントに身を包む、長身のシルエット。
濡れたように輝く、褐色の肌。
妖しげな光を放つ、黒曜石の瞳。
薄くて大振りな、艶めかしいほどに紅い唇。
彼の者が大きく欠伸をした刹那、白く長い牙が垣間見え、叫び声を上げそうになる。
闇夜の森に、一人きり。
突如として降って湧いた、異形の者。
恐怖を覚えて当たり前のはずなのに、その姿があまりに綺麗で。
魅せられるあまり、逃げるのが遅れた。
そうこうするうちに、目が合ってしまう。
「……ンだよ、オレが見えンのか?」
毒のように甘い声。
いつまででも聞いていたくなる、闇夜の音楽のように艶やかで、深みと憂いのある声だった。
「ぼくは、リン。あなたは……?」
「ボーズ、オレが怖くねェのか?」
「だって、きれいだから……」
「はっ……、そりゃどーも?」
皮肉げな笑いに、ドキッとした。
「リューだ。真実の名前は明かせねェ。悪ィが、通り名でガマンしてくれ」
「リュー」
「おう」
「リューは、何者なの?」
さァな、とリューが天を仰ぐ。
「オマエらと違うのは確かだな」
「さびしい?」
「ンな顔してっか?」
「うん、してる」
そうか、とリューが己のアゴを撫でた。
「……なら、早いとこデカくなれ。オマエ、イイトコのボンボンだろ? 金に飽かせて、オレの居場所でも作ってくれよ」
「ぼくがリューの居場所を……?」
何でもない風を装っているのに、ひどく疲れた顔に、胸を突かれた。
この人は、きっと自分より遥かに独りなのだ。
冷たくて、光のない道を歩いている。
「ねぇ、一緒に行ったらダメかな……。そしたらぼくもリューも、寂しくないでしょう?」
「ははっ、さすがに、そりゃムリだ。オマエじゃ、何もかもが足ンねェ。プロポーズすンなら、せめてもーちょいオトナになってからにしろよ」
むぅ、と唇を尖らせた。
「何歳になったら、いいの?」
「ン……、そりゃまァ、せめて吐精できる年になってくンねェとなァ。できりゃ、10年は待ちてェとこだ」
「そんなに……?」
「つっても、オレ好みに育つ補償さんざ、ねェしな。……聞き流せ」
気持ちだけもらっとく、とガシガシ乱暴に頭を撫でられた。
「もう行け」
漆黒のマントを翻し、リューがスッと彼方を指差した。
「真っ直ぐ行け。屋敷に続く道に出る」
「リュー! また会える……?」
「気が向いたらな」
ヒラヒラと手を振りながら、遠ざかっていく。
やがて、リューの気配が消えた。
その後、リューの指し示した方角を夢中で駆け、納屋に戻った。
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