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衝撃(シローside)
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応接用のソファにうながされ、真っ直ぐに向き合った。
「リューから、遣いがきた」
「……主は何と?」
「おまえを辞めさせたい。細かいことは任せる。給金は弾んでやれ。次はジジイを寄越せ。以上」
ギュッと、膝の上で拳を握った。
「……わたしの何が、いけなかったんでしょうか」
わかれば、直せる。
今回は辞めさせられたとしても、直すよう努力して、 再度出直せばいい。
だが、リンが困ったように首を振る。
「おまえに落ち度はない。あくまでリュー自身の問題だ」
そう言われてしまえば、先に続く道を失った気分になる。
「どうすれば……」
「一つ聞きたい」
うつむいていた顔を持ち上げた。
「おまえはリューをどう思う?」
主を?
「魅力的な方だと」
「それから?」
リンの瞳がやさしくて、うながされるままに、続けた。
「孤独に……見えました。とてつもなく深く、独りだと」
「……うん」
「あの方の傷に触れたい。癒せないまでも、寄り添ってさしあげたい。ホッと息をつける存在になりたい。……たかが執事風情が、おこがましいですが」
「いや、リューに必要なのは、まさにそういった相手だ」
相手と言った言葉からは、主と執事という縦つながりの関係ではなく、もっとずっと対等で親密な響きを感じた。
「あいつには、秘密がある。関われば、おまえもただでは済まないだろう。生涯、あれに囚われることになる。それでも共に生きていく覚悟があるか?」
試すように、瞳をのぞきこまれた。
秘密の匂いは、端からしていた。
色濃くまとわりつくそれに、恐れよりも興味を覚え、あの声に……唇に惹かれた時点で、答えは決まっていたように思う。
傲岸不遜な男が、誰にも言えない秘密を抱え、人知れず闇で息を殺している。
傷に触れるな、独りで立てると、人を遠ざけながら過ごす、途方もなく孤独な夜を思った。
そばに行きたい。
寄り添い、わずかでも温もりを移したい。
自分の生が誰かを支えるために与えられたものだとしたら、その相手は傷だらけのあの方がいい……。
「覚悟なら、決まっています」
この先、何を知っても、どこに流されようと。
主と共に在る。
そう決めた。
「……わかった」
リンが頷いたちょうどその時、扉がノックされた。
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