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イヴに知った事
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物心ついた時から両親の仲は悪かった
口を開けば喧嘩ばかりで、最後には必ず僕に八つ当たり
それが当たり前だった
父親は僕とは会話すらしてくれない
母親は僕の顔を見るたびに吐き気がすると言った
生まれて16年間、僕は毎日罵られ続けていた
もちろん暴力も毎日のように振るわれていた
毎日死にたいと思っていた
でも、いい子にしていればいつかは僕を見てくれると信じていたのに
そしてその喧嘩の原因が僕だとさっき知った
16年間生きて来て漸く一つの謎が解けたと同時に僕は幸せと言う意味も失った
僕に残されたものは限りない暗闇
光など射さない真っ暗な空間
街はクリスマス色に染まっているのに今の僕には全てが暗闇にしか見えなかった
どこをどう歩いていたのかもわからない
そしてこの場所にたどり着き、ぼんやりベンチに腰掛けていた
「そこの君」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「メリークリスマス!」
「何ですか」
「何ですかって、サンタだけど」
「見ればわかります」
「嘘だと思う?」
「思い切り」
「そう・・・・・おかしいな」
「バイト中なんでしょ?サボったら叱られますよ」
「平気」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
赤い服を着ていればサンタだと思うのは幼稚園まででしょ
そもそもサンタなんてこの世には存在しないものだしね
「そうか!」
「?」
「ひげがないから?」
「・・・・・・・・・・・・いえ」
「そう」
まだいたんだ
しかも真剣に何かを考えているし
「トナカイがいないからとか?」
「いえ・・・・と言うか今時サンタなんて信じる人はいませんよ」
「そうなの?どうして?」
「どうしてって・・・・・居ないからです」
「ここにいるけど」
「・・・・・・・・・・・・バイトのマニュアルにそう書かれていたんですね」
「バイトって?」
「とにかく、僕ではなくて子供に話しかけた方がいいですよ」
「身長が子供・・・・・」
「殴りますよ」
「じゃ、いくつなの?」
「16です」
「へぇ・・・・・そう」
「だからサンタなんか信じないしそこにいられるのも迷惑です」
「聞いてもいい?」
「何ですか」
「トナカイ見なかった?」
「・・・・・・・・・・・・見ません」
「そう、困ったな・・・ホントにすぐ遊びに行ってしまうんだから」
一体何?と言うか頭は大丈夫なの?
嫌味も通じないような馬鹿なの?
「じゃ、戻るまでここで待たせてもらってもいいかな」
「どうぞ、好きなだけ」
「ありがとう」
こんな事をしている場合じゃないのに
早く僕の居場所を見つけなければいけないのに
でも・・・・・それも何だか馬鹿らしくなってきた
イヴに死ぬのも悪くないかな
どうせもともと生まれて来てはいけない子供だったんだから
そんな事を考えながら雪が降り出しそうな空を見上げて溜息をついた
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