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どんなことを頼まれても、無表情で“わかった”と答える坂谷がどちらかといえば苦手だった俺だが、馬鹿みたいにイキってるほかの奴らよりも落ち着いている坂谷との方が、共に過ごす時間は多かった。互いに一定の距離感で、干渉し合わないのが心地よかったのかもしれない。次第に人間味のない坂谷からも、些細な感情を読み取れるようになってきていた。
それは、修学旅行でテーマパークに行ったときのことだ。いつも無表情な坂谷が顔を青くしていて、よく見ると脚が震えていたのだ。
都会だ、と浮かれているほかの奴らは、坂谷には目もくれずに絶叫系マシーンの行列まで走って行ってしまい、残されたのは坂谷と俺だけだった。
「・・・もしかして、絶叫系とか無理な感じ?」
「高い所が、ダメなんだ。観覧車もダメで・・・。」
「おーい!烏童~坂谷~!早く来いよ!今なら10分待ちで乗れっぞ~。」
か細い声で「うん」と言った坂谷の前にでて、俺は大きな声でほかの奴らに叫んだ。
「ごめん!坂谷がちょっと具合悪いみてぇだから、ちょっとベンチで休むわ~!」
「う、烏童・・・?」
「いいから、あっちいこーぜ。」
なんだよノリわりぃなぁといいながらも、他の奴らは俺らのことなどどうでも良さそうに、絶叫マシンの行列へと消えていった。
「ごめん・・・烏童も行きたかったんじゃ・・・?」
「別に?俺はへーきだけど、ああいう並ぶのとか短気だから嫌いなんだよね。あと人混みも嫌い。」
お前とは違って人に合わせんの一番嫌いだから、と言い捨てると、坂谷は少し吹き出して笑った。・・・なんだ、こいつも笑ったりすんのか。
「烏童はいつもマイペースだね。皆がしてても気に入らないことはしないし。」
「集団行動なんてめんどくせーこと、女子だけで充分だよ。」
欠伸をしながらそう言うと、坂谷は観覧車を遠目に見つめながら、烏堂らしいやと小さく笑った。
「烏童のそういうとこ、好きだな。・・・僕には絶対出来ないし・・・。」
「ほんっと、お前は自己主張なさすぎな。・・・ロボットみてーでキモイ奴だなと思ってたけど、やっぱりお前も人間だな。なんか安心したわ。」
はっきりいって、ホッとしたのは俺の方なのに、何故か坂谷の方が安堵の表情を浮かべていた。
「・・・もし俺がジェットコースター一緒に乗ってって頼んだら、わかったーって乗ってくれんの?お前。」
「烏童となら・・・頑張る、かもしれない。」
「・・・ほんっと、変なヤツ。」
そのとき、茹で蛸のように真っ赤になった坂谷のことを、俺はどうしても忘れることが出来なかった。
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