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七
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赤い光がゆらりと動き、私はハッとした。
「起きてたんですか」
電気の消えた部屋に油断していた、とは言わない。なんとなく彼は寝ずに待っていると思っていたが、寝煙草を悪びれもせず、挟んだ煙草をこちらに向けてくるとは思わなかった。
「で?なんでアンタは裸な訳?」
タオルで頭を拭きながら素っ裸で出てきた私を見て、彼は吸っていた煙草を消した。
間接照明をつけて見えた灰皿には、彼から貰った細目の煙草が横たわっていた。初めて会った日に渡された、どこぞの女のあの煙草だ。吸わないのに捨てられず出窓に置いたまま、でも忘れていた訳じゃない。毎朝それをみて彼と再会する“運気”のようなものを貰っていたのだ。……中二というかなんとも乙女発想。我ながら頭が悪いとは理解している。
「やっぱり、“お人好し”は絶滅してたんだな。すっかり騙された」
先程風呂場で処理した名残が僅かに残ったままの半身は、しらを通せるかと思っていたがやはり同族にはすぐに伝わるものらしい。
彼はまた次の煙草を取り出して火をつけた。最後の一本と見え、女が好きそうな凝った箱をゴミ箱目掛け飛ばし、ライターはそのまま出窓に置かれた。
灰皿の中には、まだ吸える長さの煙草が何本も並べられていたが、どれもぽっきりと折られていた。
そして彼の眉間に深くなっていたシワを確認した。
「“お人好し”てね、とてもつまらないんだよ。知ってた?」
濡れたタオルをその場に落とした。行き先はもう決まっている。彼の横たわるベッド、彼のその横だ。
「だから、俺をどうにかしようっての?」
今着けたばかりの煙草を深く吸い込んだ彼は、長さの残る煙草を指の中でもみ消して体を起こした。
片目が細く鋭く私を睨んでいる。そう、その雄の眼に私は異常に弱い。私は堪らず自身を反応させた。今この瞬間、彼のその目は間違いなく私だけを見ている。私だけに嫌悪を向けて、私だけを意識してくれている。もっともっと私だけを見て欲しい。
「私は貴方と違って“女”は知らない。その代わり、私を貴方の“オンナ”にしてくれよ」
胸ぐらを付かんで引き寄せた唇に私は自身の唇をぶつけた。驚いたように大きく開かれた眼に私が映って彼の動きが鈍くなったのはわずかな時間で、すぐに彼の手によって首を押された。
「面白れぇ“オンナ”だな」
グググッと力は加算され、同時に気の遠くなる程の気持ち良さも──
…私は瞬間的にオチていたように思う。
ドロドロに溶けた何かが、口を開けた排水口にゆっくりと流れ込んでいく。周りの物を絡め、何もかもいっしょくたにしてズルズルと鈍い速度で───そして最後は一気に、一瞬で──。
【続かない】
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