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唇にキスを
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<52、唇にキスを>
吐息がふわりと混ざり合う距離に身を竦ませながら、きつく瞳を閉じる。
唇に触れる熱を想像しながら待ち続けても、一向に孝太郎が距離を縮める気配がなくおそるおそる目を開ける。
ちょっと困った、なんともいえない顔がこちらを見つめていた。
「……な、なに?」
「いや……この前、キスを拒否られたからなーと、思って……」
「はあ?」
あの時とは状況が違うだろ! アホかお前!
と、叫びたいのをぐっとガマンする。恥ずかしくて恥ずかしくて唇を噛む。
それじゃさっきの俺は、孝太郎のキスをずっと待ってるアホみたいな顔を晒してたことになる。
なんの羞恥プレイだ!
「バカ! 見んな! ヘタレ!」
「ごめん、ごめんってば!」
「うううう!」
「こら、唇噛むなって。樹」
「なんだよ!」
「キスしてもいい?」
ばしばしと孝太郎の肩やら頭やらを叩く。しかし、にっこにこしながら俺の頬をやんわり包む指が温かくて、流されそうな自分に悔しくなる。
「ううう」
「しちゃだめ?」
「……んなこと、聞くな! アホ!」
すかさずちゅっと唇を食まれ、少しの間息が出来なくなった。
もうほんとに溶けてなくなるんじゃないかってくらいに孝太郎の顔は緩みきっていて、嬉しくて仕方がないと笑った。
「ふふふ」
「なに! キモイ!」
「樹、好きだよ」
「だからもういいってば!」
ぎゅうぎゅう抱きしめてくる腕が鬱陶しい反面、胸の中は嬉しさに震えていて。なんだかちぐはぐすぎる心の動きに困惑しながら、俺も抱きしめ返す。
「俺は……こういうの慣れてないんだから。お前が察しろ」
「いっくん好きだよ」
「話聞けよお前!!」
ふにゃふにゃ笑い続ける孝太郎がいい加減うざくなってきて、なおも近づけようとする顔を必死に押しやるが、全く効果がない。ゴロゴロと猫のように肩に擦り寄るこいつに呆れつつ、髪を撫でてやる。
「お前、なんか変だぞ」
「変にもなるよ。やっと、なんだから」
「やっと……」
「ずっとね、お前だけ好きだった」
額に唇が触れる。次はまぶた、頬、口の端。くすぐるようなキスの雨にもどかしくなって、ちょっと唇を尖らせてそこへのキスをねだる。
またしてもごめんと笑いながら、優しいキスが降ってくる。
「ちゅ、んむっ」
「……樹、鼻で息して」
「ふはっ、はぁっ」
「そ、上手」
はむはむと下唇を食まれたあと、ちゅっちゅっとついばむようなバードキス。わざと音を立てるようにキスを仕掛けてくるので、どうしたらいいかわからない。孝太郎にされるがままだ。
孝太郎とのキスは甘く、限りなく優しかった。唇ってこんなに柔らかいのか。これはちょっと、ハマりそう。
「んっ、ん…」
「……樹、大丈夫?」
「……恥ずかしいな、これ」
「嫌じゃないなら、もうちょっとしていい?」
その言葉にゆっくりと頷くと、ペロリと唇を舐められてこの前のキスを思い出す。
あの思考を全部溶かすような、腰砕けのキス。経験の違いを見せられたあのキスをするには俺が口を開けなきゃいけない。開けなきゃとはわかっているけれど、身体全体が強張ってしまってうまく動かない。
「……樹? 怖い?」
「怖くは…ない」
「そっか。ーー気持ち良くしてあげる。口、開けて」
つつと親指が唇をなぞり、ぞわぞわと足の先から何かが這い上がってくる感覚がある。
触れたい。触れられたい。もっとーー。
あらがえない衝動に身を打つように、まぶたをそっと閉じた。
薄く開いた唇のラインをなぞるように舌が這い、舌先にちょっとだけ触れる。ふっと息をついた隙に、ぐっと舌が押し入ってくる。
引っ込んだ舌を引きずり出すように舌を絡め取られ、ちゅうと吸われる。それでも動く舌はあくまで優しく、俺の反応を見て楽しんでいるようだった。
「気持ちいい?」
「っぁ、う、ん」
全ての感覚を支配されるようなキスにもう正常な思考はほとんど動いていない。貪欲にキスを求めて孝太郎の服に切なく縋る。その手を自分の指を絡め、指の間をなぞられる。冷たい指先の感覚さえ気持ちよかった。
さっきから肌の表面がざわざわして落ち着かない。舌を吸われたり擦り合わせたりするだけで腰にじんじんと何かの熱が溜まっているのがわかる。
やばい、勃ちそう。
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