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恋人たちの祭り 3
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(…とは言ったものの)
アルは足を延ばして老舗の大手百貨店まで来ていた。
大きな建物の中をウロウロして疲れてしまい、ベンチでぐったりとため息をつく。
結局どれもこれもピンと来ないまま選べず、アルはまだ何も購入していなかった。
(どうしよう…)
少し休憩をして、アルは別館へと足を運んだ。
(無難に赤い薔薇の花束にするかなぁ。意外性は無いけど…)
アルは出口に向かって食品のフロアを突っ切った。
ケーキ、焼き菓子、チョコレート、コーヒー、フルーツ、酒、パン、さらにはジャムや蜂蜜、様々な専門店からいい匂いが漂ってくる。
ふと小さなチョコレート専門店のショーケースに目が留まった。
バレンタインデー用にギフト向け商品がいくつか並んでいる。
結構な値段だが買えないことはない。
フレーバーやカカオの量でたくさんの種類があることにアルは驚いた。
チョコレートにするかどうかも決めていないのに、ショーケース越しにアルは話しかけられてしまった。
「贈り物用にお探しですか?」
「…え、あ、はい」
慌てて返事をするアルに、店主であろう男性はにっこりと笑った。
「バレンタインデーですか?」
アルはうっすら赤面して小さく頷いた。
「でしたら、こちらはいかがですか?」
彼が見せてくれたのは薔薇の花をかたどったチョコレートがいくつも箱に並んだものだった。
ビター、ミルク、ブラック、スウィート、フレーバーのものは、オレンジ、イチゴ、リキュールもあった。
「きれい」
その繊細な細工に見入って、アルは思わず呟いた。
そして直感で、これを贈ろうと決めた。
「あの、紅茶に合うチョコってありますか?」
「それでしたら、こちらのバナナのフレーバーやフルーツ系のもの、ミルクや甘いチョコはいかがですか?」
アルは彼にチョコレートを選んでもらいながら、実はチョコレートは酒にも合うと知って、それならミカにそれも贈ろうかと考えた。
しかし彼の話では、チョコレートはブランデーやウィスキーに合うらしい。
お菓子や料理には使うが、ミカがウィスキーやブランデーを飲んでいる姿を見たことが無い。
「チョコって他のお酒には合いませんか?」
「そうですねぇ…。カカオ含有率の高いものや砂糖の入っていないものですと、辛口の白ワインやシャンパンに合いますよ」
「そうなんだ! えっと、それもお願いします」
アルは薔薇の形をした様々なチョコレートを箱に詰めてもらうと、はたと気付いた。
今日これを買ったら、当日までどこに置いておくんだ?
冷蔵庫はばれちゃうし、部屋では溶けちゃうし…。
「あの、これ、14日に取りに来ますから置いておいてもらうことはできますか?」
アルが財布を出しながら聞くと、店主は「大丈夫です。お預かりしますよ」とにっこり頷いてくれた。
それから彼にワインを買える店を聞くと、アルは同じフロアのワイン専門店へ行った。
そこでもアルはチョコレートに合うワインを店員に相談しながら決めて、やはり預かってもらうことにした。
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