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ランジェリーをめぐる攻防戦 アル編 1
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アルがチョコレートとワインをミカに贈ったバレンタインデーから数週間後の、とある週末。
リュリュ達に誘われてアルは、リュカの誕生日のサプライズパーティーの準備をしていた。
今回は間違えないようにとアルは、まず先にミカにバースディパーティーに行って良いかどうかの確認をした。
あっさりOKはしてもらえたが、条件がひとつだけあった。
遅くなっても構わないから帰ってくること、泊まりはダメ。
必要なら迎えに行くから帰るときは連絡すること、とも言われた。
友人達にその件は話してある。
彼等は過保護だなぁと笑ったが、記憶喪失のことは知っているので、日付が変わる前には帰れるようにしてくれるらしい。
もちろん、アル以外も女子たちは帰宅するが、他は泊まるようだ。
アルはそれを楽しそうだなと、少々うらやましく思ったが、何よりミカが優先だ。
ミカとの約束を破ってまでやりたいことなんか無い。
アルは飾りつけのための風船を膨らませた。
アルは酒は飲めるが強いわけではない。
結局、ミカに電話をしたのはアルではなくてリュリュだった。
スマホのマナーモードを解除して枕元に置き、23時頃にベッドに入ったミカが電話の音で起こされたのは、深夜1時をとっくに過ぎた頃だった。
アルの名前を確認して電話に出たが聞こえてきたのはアルの声ではなかった。
「こんばんは、ミカさん。リュリュです。遅くにすみません」
「こんばんは。アルはどうしたの?」
「酔い潰れてしまって電話もできないほどなんですが、とにかく帰るの一点張りで。ふらふらして危ないから泊まっていいって言ってるんですが、何が何でも帰るってきかなくて」
ミカは内心笑ってしまった。
酔い潰れるとは珍しいが、そんなになっても自分との約束は果たそうと、友人の言葉に流されずに帰ると言い張るとは、なんとも可愛いではないか。
「そのままそこで寝かせておいてくれるかな? 迎えに行くから住所を聞いてもいい?」
ミカは身支度を整えると、カーナビに住所を入力して、静まり返った街を走り抜けた。
ぐでんぐでんになったアルをどうにかこうにか連れ帰り、ミカは彼をベッドに放るようにして横たえた。
「ほら、アル。それじゃ窮屈でしょ。とにかく脱いで」
そうしてる間にもアルは上機嫌でペタペタと甘えてくる。
「へへ、ミカだぁ。ふふ、ミカ大好き~」
「こら、引っ付くな。着替えられないでしょ」
何とかシャツは脱がせたものの、アルが抱き着いて離れない。
「い~よ~、このままで~。ミカとくっついてるから寒くないも~ん」
「まったく。随分と機嫌いいね。楽しかった?」
ミカはパジャマを着せるのは諦めて、ズボンを脱がしにかかった。
「うん! 楽しかった! おいしくてぇ、面白くてぇ、いっぱい話した!」
「何を話したの?」
「みんなのね、初体験の話!」
「は?」
驚いて手が止まったが、この年齢の男子が集まって酒を飲めば、そういう話題も出てくるだろう。
その話に混ざりたいとは思わないが、ミカは、それもあることだと再び手を動かし始めた。
「リュリュはねぇ、近所のお姉さんが初めてなんだって!」
おいおい、そんなプライベートな話、第三者にしちゃダメだろ。
ミカは苦笑しながら、喋り続けるアルの話を聞いていた。
「でね、俺の話もしちゃった!」
「え?」
「俺、記憶喪失だからぁ、とりあえず覚えてる範囲での最初ってことになるんだけどぉ」
ミカはアルの口を手で塞いだ。
聞きたくない。
顔も知らない誰かと寝た話など知りたくない。
そりゃ、出会った時からアルの乱れた性意識は知ってる。
だから、数え切れないほどの、しかも性別問わずにしてきた体験を知らないわけではない。
しかし、事細かに聞いたことは無い。
聞きたいと思ったことも無い。
これは嫉妬だ。
変えられない、手を伸ばしても守れないし消せない過去への嫉妬だ。
羨ましいのではない。妬ましいのでもない。
ただ単純にアルに触れていいのは自分だけだという独占欲だ。
「ミカ?」
アルが小首を傾げてミカを見上げる。
「ミカ、どうしたの? どこか痛い? 苦しい?」
そんな顔をしていたのか。
ミカは自覚していなかった自分の表情を指摘され、無理矢理に笑顔を作った。
「大丈夫だよ。ほら、腰上げて」
言われたとおりに腰を上げ、引っ張り脱がされて下着一枚になるアル。
「ミカは?」
「ん? 何が?」
「ミカは初めて、いくつの時?」
まだその話題を続ける気か。
ミカはアルに毛布を掛けた。
「もう寝なさい」
「や~だ~」
「夜遅いんだよ?」
「ミ~カ、ミ~カ、抱っこ」
両手を伸ばして子供のように笑うアルを、ミカは軽く抱きしめた。
「ミカ、あのね、俺ね、でもね、ミカの初めて貰っちゃったから幸せなんだ~、へへ」
心底幸せそうに笑うアルは2年前のことを言っているのだろう。
「俺ね、幸せ。大好きなミカがいてぇ、いつも一緒でぇ、すっげぇ幸せ!」
何が楽しいんだか、きゃっきゃとはしゃぎながらそんなことを言う。
ミカはそこで気が付いた。
酔っぱらったアルは友人達に初体験の話をしたと言った。
自分が知らないことを彼等は知っているわけだ。
悔しいと思いながらも、聞きたくないというのも本音だ。
ミカはアルに意地悪してやりたくなった。
スマホのムービー撮影をタップしてアルに向ける。
「アル、ひとつお願いがあるんだけど、聞いてくれるかな?」
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