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全ての始まり①
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俺は、男が嫌いだ。
考えてることは分からないし、第一に何をし出すか不確定で怖い。男なんて、所詮は性欲しか頭にないような生き物なのではないか。そう思ってしまう。
なんて言っている俺も男なんだけど、俺はそう言った人間にはならないよう生きてきたつもりだ。
女の子には手を出したりしないし、そういう類のサイトなんかも見た事が無い。
そして何より、男にはやたらに近付かないようにしている。出来る限り、男は避ける。
俺の人生は、寝る、食べる、働くで回っているのだから、男なんていなくても生きていける。
「…あの、佐伯さん?」
「え?あぁ、はい」
俺に話し掛けて来たのは、同じ職場で働く24歳の女性、生駒玲乃だった。
彼女は年齢の割には童顔で、幼い部分が多々ある。周りからはドジだといわれているようだ。
「どうしましたか?」
「はい、この資料に欠落があったので、佐伯さんに確認していただきに」
生駒さんはにこりと笑い、数枚の束になった資料を俺に渡す。
俺が働くのは日用雑貨品などの企画部で、資料の欠落と言うのは企画商品の詳細ミスのようだ。同じチームの人のミスだろう。
「分かりました」
「はい。それはすぐにでは無いので、今日中に宜しくお願いします」
俺は小さく頷き、受け取った資料を雑にデスクの上に置いた。お陰で、デスク上は資料だらけだ。
現在時刻、7時55分。会社の出勤時刻、8時。
俺は一応企画部チームのリーダーを任されているから、念の為毎日7時30分には出勤する。昨日の残りを終わしたり、細かい確認などをするだけなのだが。
生駒さんは特にリーダーという訳では無いが、いつも早めの出勤をしていた。
「おはよう」
その時、社内に篠原部長が入ってきた。年は40歳近く、細身で髪型はオールバックだ。人望は厚い。
その後に、社員が続々と入って来る。女性社員が多く、皆軽く挨拶をしてデスクに着いた。
実際俺は、男性の少ない会社を選んだからな。
「おはようございます」
その人の流れを目で追っていると、1人、見慣れない男が入社して来た。俺は男かよ、と思いつつパソコンに視線を移す。
チラッと男の方を見ると、男は何やら課長と話しているようだった。まぁ、俺には関係無いのだが。
「佐伯さん、おはようございます」
早坂優希は長い髪を耳に掛けつつ、俺の隣のデスクに座った。生駒さんとは違い、割とテキパキとした女性だ。
「おはようございます」
すると早坂さんは、そっと耳打ちするように言った。
「…あの部長と話してる人、今日からここで働くそうですよ」
まるでクラスに転入生が入って来るような口振りである。男は嫌いだが、別に関わらなければ問題無い。
そんな軽い気持ちだ。
「そうなんですか」
俺はそれなりにあしらい、資料の作成に戻った。
そして数分が過ぎた時だ。
「佐伯くん」
部長の声に顔を上げると、何とそこにはさっきの男が立っていた。俺は驚きのあまり、瞬時目を見開く。
「…な、なんでしょうか」
思わず立ち上がると、知らず手を握っていた。
部長はそんなことにも気付かず、俺に紹介を始める。
「こちら、一ノ瀬遥斗くん。今日から君のチームに入ることになったから、リーダーの佐伯くんに教育係をお願いしたい」
教育係?
「はぁ…」
訳が分からなかった。男性が苦手だと言うことを会社に言ってないにせよ、それでも不便では無かった。
俺が入社して来た時も教育係は女性だったし。なのにまさか、男の教育係を任せられるとは。
「一ノ瀬遥斗です。宜しくお願いします」
無表情の彼は、俺に頭を下げた。
「佐伯陽裕です」
彼が頭を上げてから、仕方無く俺からも名乗る。
一ノ瀬遥斗。そう名乗った彼は愛想の悪そうな顔で、俺を見詰める。身長は俺よりも高い。
「宜しく、お願いします…」
正直、怖い。
手汗すごいし、馬鹿みたいに心臓もバクバク言ってる。息切れもしそうになる。
「はぁっ……」
俺は何とか誤魔化そうと、息を飲んだ。
「じゃあ一ノ瀬くんは佐伯くんの隣でいいかな」
「はい」
彼の同意を聞くと、部長はよろしくとだけ残して自分のデスクへと戻った。
俺の意見は聞かないのか!
今まで隣には誰も来なかったのに、よりにもよって男が来るなんて、最悪だ。
「じゃあ俺、ここ使わせてもらいますね」
「どうぞ…」
一ノ瀬くんはこっちの事情など知らず、自然に椅子に座った。早坂さんはよろしくね、と一ノ瀬くんに微笑む。
あぁ、もう帰りたい。そればかりを思った。
「…佐伯さん、何かすることありますか」
一ノ瀬くんが、男が話し掛けてくる。部長は長い付き合いだから何ともないが、この人は違う。初対面だし、男って感じがする。
「あ、じゃあ……この資料と同じの作ってください」
俺は恐る恐る、デスクの上にあったファイルの1つを差し出した。
「はい、分かりました」
淡泊とした一ノ瀬くんの声。こちらに伸びる手。
一ノ瀬くんはそっとファイルを受け取った。
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