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打ち合わせは4時間にも及んだ。
昼を挟んで行った為、結構お腹が空いている。
話し合いの最中、お腹が鳴らないか心配だった。
だが今はそんなことよりも、さっきまでの打ち合わせの内容を頭の中で振り返る。
(疲れた……)
思ったよりも一ノ瀬くんと早坂さんに頼ってしまう場面が多かったな、と少し反省する。
しかしその反面、指名したのが二人で良かったと、心の底から思った。
一ノ瀬くんも早坂さんも、すごく積極的に意見を出してくれたし、時折俺のフォローもしてくれた。
まぁ、その後の会議やら何やらに企画部はほとんど参加しなくてもいいようだったから、もう仕事はほぼほぼ残っていない。あっても、残った雑務くらいだろう。
そうして仕事が終わったことに息を吐き、それと同時にまた空腹感が蘇ってくる。
(…お昼どうしよう)
ぜひ会社の食堂を利用してくださいと、羽田さんに言われたが、何となく他社の食堂へは行きづらい。
場所は、案内板を見たり誰かに聞いたりすれば分かるのだが、他の会社から来ているのに食堂を使わせてもらうのは、何だか申し訳無く感じた。
だから、まず俺は会議室の外で立ち尽くす。
社員の人が廊下を通る度に挨拶をされ、ここにいるのも気疲れした。
仕方無く、俺は何か買って食べようと思い、歩き始めた。
(コンビニかな……)
▽ ▽ ▽
そして外に出ると、会社と出入り口付近に一ノ瀬くんが立っていた。
電話が来たとかで、外に行ってしまったきり戻って来なかったから、もう昼食を食べにどこかへ向かったのだろうとばかり思っていた。
その為、俺は少し驚く。
「……一ノ瀬くん」
俺が声を掛けると、一ノ瀬くんはスマホの画面から視線を上げた。
「佐伯さん」
その僅かに弾んだ声色からは、いつもは表情を変えない一ノ瀬くんの気持ちが窺い知れたような気がする。
「こんなところで、何をしてたんですか?」
「何って……佐伯さんを待ってました」
それはまるで、当然だとでも言いたげな口振りだ。
別に、ここで待ち合せる約束なんてしていないのに。
「俺がここに来なかったらどうしてたんですか……」
「あぁ、確かにそうですね」
今気が付いたように、一ノ瀬くんが言う。
そんなことも考えずに俺を待っていてくれたのか。
多分こういう時、仮に一ノ瀬くんと待ち合せる約束をしているのに俺が来なかったら、一ノ瀬くんはその場所で、いつまでも待っているのだろう。
一ノ瀬くんが俺のことを好きという自意識過剰かもしれないが、ふとそう思った。
「佐伯さん、昼食を食べに行くんですよね」
「…食べに、というか、買いに行くつもりですけど」
「じゃあ、どこかレストランに行きましょう。俺、奢りますから」
何の見返りも求めない言葉だ。
その拒否権を与えない言い方に、俺はとりあえず頷くしかなかった。
(オムライスだな……)
しかし、コンビニのものよりもレストランでの食事の方が美味しいと思うから、俺は密かに嬉しくなる。
オムライスを注文することは、既に決定事項に入っていた。
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