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心境①
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そして世良さんに連れて来られた場所は、近くのカフェだった。何の偶然なのか、そこは前に一ノ瀬くんと一緒に来た場所だった。
「………」
しかし、それを言ってしまったら色々と面倒になりそうなので、世良さんには言わない。
「ここよく来るんだよねぇ」
「え……」
思わず声を上げてしまう。
一ノ瀬くんと出掛けた日、ここであーんなんてした時にはいなかったのだろうか。
もしいたとしたら、または見られていたとしたら、それはもう恥ずかし過ぎてどうにかなりそうだ。
だけど、それを聞く訳にもいかないから、俺は何も問い掛けなかった。
「…じゃあ座ろうか」
ウェイトレスの人に席を案内された俺と世良さんは、向かい合って椅子に座る。
また窓際の席で、嫌でも一ノ瀬くんとのことを思い出してしまった。
「……陽裕くん、何頼む?」
メニュー表を開きながら、世良さんが問い掛けてくる。
しかし俺は財布を持って来ていなかったので、何も頼めない。
かと言って、お金を払ってくださいだなどと失礼なことは言えないから、ただ愛想笑いを浮かべた。
ご飯は家に帰ったら──
(……違う)
俺は、一ノ瀬くんの家になんて戻れないんだった。
「俺は、大丈夫です」
「でもお腹空いてるでしょ?奢るからさ、何か頼みなよ」
俺が朝から何も食べていないことも、お金を持っていないこともバレたのだろうか。
世良さんにそんな様子は無いが、そんなことを言われたら注文したくなってしまう。
世良さんは俺に拒否権を与えないように、メニュー表を寄越してきた。
「何でもどうぞ」
ここまでされては、断るにも断れない。
俺は渋々、メニュー表を手に取り目を通した。
(……決まってるんだけど)
ここのオムライスなんか見たら、食べたら、きっと一ノ瀬くんとの出来事を思い出しそうになるだろう。
それでも、俺が頼むのはオムライスくらいだから、仕方が無い。
それに、店内の匂いとメニュー表の美味しそうな写真を見たら、空腹なんて誤魔化せそうになかった。
「……オムライス、食べたいです」
「うん、分かった」
そう言うと、世良さんはとっくに注文を決めていたのか、近くを通ったウェイトレスを呼んだ。
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