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呼び出し鈴
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店内の呼び出し鈴に雄大はハッとして振り返った。
「あっ…今日は僕が夕勤リーダーだった。行かなきゃ!」
雄大が再び向き合うとちょっと寂しげな顔をした加藤がいた。
「…今日は帰るよ。そうだ。近いうちに歓迎会の買いに来るから。」
「あっ…」
「また今度ゆっくりね。」
加藤はポンポンと頭を叩いた。
「はっ…はい。」
(あっ…今度の休み…決まってなかった!上村君入ったから、店長がシフトやり直すって言ってた!)
雄大は(どうしよう…)と顎に手を当てて考え込んだ。
(夜も空くはずだけど…)
悩む雄大の頭が軽く、ポンッと叩かれた。
「じゃあね。またね。」
加藤は爽やかな笑顔で手を振り去って行った。
”またね。”
(よかった….”またね”って言ってくれた。)
嬉しさがこみ上げてくるのがわかる。
落ち込んでた自分をこんな幸せな気分にしてくれる加藤の存在に、加藤のたった一言に、足取りも軽くなる。
「♪♪」
「楽しそうね、ゆーたん。」
レジに向かうともう客は終わったのか、ニヤニヤした西川だけが立っていた。
「なっ、何の事?」
「スキップしながらこっちに来てたわよ。」
「えっ!?(恥)」
「顔赤いよ。」
「えっ?赤い!?」
指をさされ、両手で顔を包んだ。
「まぁ、わかるわよ。あれだけ顔がいいと同性でもドキドキするわよね。背が高くて、スーツをパリッと着こなして大人な男性って感じ☆ということで、ねぇ?早く合コン頼んでよ。」
「だから休みが…」
バンッ!!
後ろで大きな音がして、雄大はビクッと肩を揺らした。
振り向くと商品を入れる紙袋を上村が乱暴に机に置いていた。
「あっ…ありがとう。補充をしてくれ…」
「関心しませんね。」
ギッと睨まれ、歩み寄ろうとした雄大は足を止めた。
「関心…?」
「お客に商品を取ってもらう事です。」
「あっ…」
(見ていたのか…)
雄大は何も言葉が出ず、呆然とした。
「店員なら脚立なり持ってきて、商品を取るべきです。しかもあのお客が欲しくて取ったんじゃないですよね?貴方が取って欲しかったんですよね?」
「…ちょっと気になって…」
上村が雄大に一歩近づいた。
「店員が私欲の為にお客を使うなんて、ありえない事だと思います。」
「まぁまぁ、上村君。あのお客さん、ゆーたんの知り合いの人だから。さっき話したでしょう?」
西川は笑顔を作りながら、声をひそめながら喋った。
「だとしても周りのお客様から見れば、そんなのわからないんですから、客を使う店員だって思われても仕方ありません。」
雄大はギリリッと歯を食いしばった。
「そんな事、思わないわよ。ねぇ?2人、仲よさげだし。。」
西川のその言葉を叩き消すように上村は持ってきた紙袋をバンッと叩いた。
「俺にはそうは見えません。」
「えっ?」
「2人は不釣り合いです。」
グサッ…
心臓を薄いペーパーナイフで刺されたような、入り込むような鋭い痛みを感じた。
「ちょっ…」
西川が雄大と上村の間に入ろうとしたが、上村がプイッと身を翻した。
「俺、ゴミ捨ててきます。」
サクサクと歩いていく上村に置いてかれて、雄大はぐっと拳を握った。
「なんなのよ、あいつ…ゆーたん、気にしないで!何か、2人の事話したら急に機嫌悪くなって。きっと大学でなんかあっただけよ。入りたてって、私も苛々したもん。ねっ?」
西川に慰められ、雄大はこくんと頷いた。
(あいつの言ってる事はよく分かる…でも…)
ここで口を開いたら、泣きそうだった。
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