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仕事に逃げてる
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「よいしょっ….と」
大きな額縁サイズの看板をさらに大きなイーゼルに乗せ、雄大は後ろへ下がった。
「ここは…見にくいかな?」
ずるずると少し引っ張っていると今度は、若い女性客にぶつかりそうになった。
「あっ、すみません。」
ジロリと睨まれ、雄大を小さくなって看板を引き寄せた。
「すみません。。」
雄大は女性が通り過ぎるのを見送って、大きくため息をついた。
(さっきまでの気合はなんだったんだ。。)
抜けていた自分にがっかりして、意外に大きな看板にもやる気を削がれた。
「大体….重いし…はぁー、もうこの辺でいいか〜。」
雄大は少し引っ張ろうとした後ろに下がった時、後ろにあった棚の足に躓いた。
「わっ!!」
雄大は盛大に尻餅をついてしまった。
ガタガタ
その瞬間、看板はぐらつき、乗せていた大きなイーゼルから、落ちそうになった。
「わっ!!ヤバっ!」
雄大は手を伸ばした。
「落ち…」
(る!!)
と思った瞬間、看板に手が支えられた。
「大丈夫?」
看板を支える背の高い人が、ひょっこりと顔を出した。
「か…とさん…。」
柔らかく目を細める加藤が、軽々と看板をイーゼルに乗せた。
「盛大にコケたみたいだね。」
長い腕を伸ばし、雄大に手を差し伸べてくれた。
「えへっ…」
「ごめんね。ちょっと間に合わなかったよ。痛くない?」
申し訳なさそうに謝られて、雄大は顔を赤くした。
「いやいや!!僕がドジくさく転んだだけですから!むしろ、看板を救ってくれてありがとうございました!」
雄大は首を振って、加藤の手を断り、急いで立ち上がった。
「恥ずかしいところをお見せしました。」
「……いいんだよ。なんか忙しそうだね。」
お店には少しずつお客がたまってきた。
「ゴールデンウィークですから。あっ!ノベルティもやってるんですよ!」
「あぁ、この看板の?」
加藤は膝を曲げて、看板を読み始めた。
「3000円以上でオリジナルコースタープレゼントね。」
雄大も並んで、膝を曲げた。
「これ、結構可愛いんですよ。このウサギ、うちのマスコットキャラなんですよ。可愛くないですか?」
「可愛いね。」
ニコニコと笑いながら顔を向けると真剣な目をした加藤と目があった。
「雄大君、ゴールデンウィーク、お休みないの?」
「えっ…?」
「仕事終わりでもいいから、俺に時間をくれないかな?」
「あっ…」
雄大が身体を起こすと加藤も身体を起こし、雄大を見下ろした。
「俺、この連休、なんの予定も入れていないんだ。雄大君とどこかで一緒になるかもしれないと思って…ね。。」
照れたように笑う加藤。
こんな年下に、何も答えていない自分に、恥ずかしそうに告白してくれる。
嬉しいのに…自分はそれに値する人間だろうかと頭をよぎる。
「雄大君、もし1時間でも時間が……」
「椿さん、いいですか?」
2人の間に上村が割り込んできた。
「すみません、レジが壊れちゃって。」
「えっ!?」
雄大はすぐに現実に戻った。
「そういうことなんで…」
上村は軽く加藤に頭を下げ、雄大の手首を引っ張った。
「あっ…あの…」
加藤の諦めたような悲しい顔をして、背を向けた。
(ごめんなさい…マジで…)
「向こうから言われたから、その気になったんでしょう?」
ハッとして、雄大は顔を上げた。
(気づかれてる?)
ちらりと横目で見ていた上村は、雄大が顔を上げるとすぐに目をそらせて、雄大を引っ張った。
(…僕だって…)
でも心の奥底では、どうしても壁があるような気がして仕方がなかった。
(僕が….作ってるんだ…)
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