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侵入失敗
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「おいっ!!」
雄大はビクッとして肩を縮めた。
(ぼ、僕…?)
心臓がバクバク言っている。
太陽の光が眩しくて、一瞬、クラリとした。
「おい、お前だよ!!」
雄大はゴクリと唾を飲み、そろそろと振り向いた。
「何やってんだ?うちになんか用か?」
目の前にはグレーのスーツを着た細身の男性が鞄を片手に近づいてきた。
「いえ…あの…」
男性は眉間にしわを寄せ、強い目で雄大を睨んできた。
(上村君と同じ…)
敵意の目。
雄大は急に怖くなって、目をつぶった。
「おい、何なんだ。んっ?お前、学生じゃないのか?学校は?」
雄大は呼吸が苦しくなり、頭が痛くなってきた。
「目を開けろよ。うちの会社の人の子どもか?」
雄大は加藤の顔が頭をよぎり、ハッと目を開けた。
(加藤さんに迷惑かけちゃう!)
「す、すみません。ただ、ちょっと素敵な会社だなぁと思って。では。」
雄大は男性から離れようとした。
「ちょっと待て。警察呼ぶぞ。どこの学校だ?」
男性が雄大の腕を掴んだ。
(警察!?)
雄大は大事になりそうな事態に頭をフル回転させた。
「ぼ、僕は20歳超えてます!」
「嘘つけ!!高校生くらいだろう!」
「違います!もう22歳です!」
「んな嘘通用するか。証拠はあるのか?免許証見せろ。」
「運転免許証は持ってません!運転できません!」
「じゃあ保険証は!?」
「家です!!僕、病気にならないんで!そうだ!姉が…姉があっちに…あっちで金を用意してます!」
男性の眉間のシワが深くなった。
(何言ってんだ、僕!)
「違う…あの…姉が…銀行に…」
雄大は銀行の方を指差したが、男性は手を離さなかった。
「怪しいな。本当は中学生とかじゃないのか?」
「いやいやいやいや!!20歳超えてるって。」
「20歳超えてる顔つきじゃないだろう。学校に連絡するぞ。こい!」
男性は雄大の腕を強く握った。
「痛っ!」
(このまま連れて行かれたら、加藤さんにも迷惑が…)
雄大は青くなりながらバタバタした。
「わかった、わかった!学校行くから!今から行くから!」
「信用ならん。」
「痛いってば!」
雄大は泣きそうなかった。
入り口が見えてきて、受付にいた女性が立ち上がってこちらを向いていた。
(どうすれば…)
雄大は唇を噛んだ。
(姉ちゃん!誰か!!)
ガラス張りの自動ドアの向こうから黒いスーツの見たことのある人が走ってくるのが見えた。
「か…」
「雄大君!!?」
加藤は自動ドアを無理やり手で押しながら、雄大と男性の元に走ってきた。
息を切らしながら走ってきた加藤は、握られている雄大の腕を見て、まっすぐに男性を見た。
「黒田さん。その子、俺の知り合いなんですよ。」
「えっ?加藤の?親戚の子か?」
加藤は黒田と呼んだ男性から、雄大の腕を取り上げ、自分の後ろに雄大を隠した。
「そんなもんです。俺が呼んだんですよ。」
広い背中で雄大は安心と不安が混ざり混ざった。
「えっ?でもこいつ、用事はないっていってたよ。」
黒田はひょいと顔を出し、雄大を見ようとした。
「あれ?雄大、俺に用事があったんだよな?」
雄大は加藤の背中に顔をつけたまま、うんうんと首を振った。
「びっくりしましたよ。表で黒田さんが若い子ともめてるっていったから、急いで見に来たら、うちの雄大だったから。すみません、御迷惑かけて。」
そう言っても黒田は興味津々に雄大を見ようとした。
「…加藤の子ども…じゃないよな?」
「んん?」
「本人、20歳超えてるって言ってるんだけど?明らかに中学生、いって高校生でしょう?だって、ほら、身体付きも幼いし。」
そういうと黒田は手を伸ばして、雄大の胸から腰を触ってきた。
「わっ!!」
「おっと!黒田さん!」
加藤は黒田から隠すように黒田に背を向けて、雄大の身体を自分の胸に抱え込んだ。
「んっ?」
「本当に20歳超えてるんです。うちの雄大、かなりの童顔でね。お酒も飲めますよ。」
「ふーん。」
黒田はしばらく顎に手を当てて雄大を見ていた。
「じゃあ今度、酒飲もう。」
「えっ?」
「20歳超えてるんなら問題ないだろう。」
黒田は驚いた顔をした加藤の肩を叩いて、その場から離れていった。
「…加藤さん…」
見上げると厳しい顔をした加藤が、黒田の去った方向を見ていた。
(迷惑…かけちゃったよ。。)
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