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強制連行
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「迷惑かけてすみません。。」
雄大はぺこりと頭を下げた。
「……」
加藤は何も言わず、厳しい目のまま窓の外を見ていた。
(怒ってる…よね。。)
雄大は手元のお手拭きをぎゅっと握りしめた。
「お待たせしました。ご注文お決まりですか?」
高い声が2人の頭に降り注いだ。
「あっ、じゃあホットコーヒーを。」
加藤はハッとしたようにメニュー表を手にした。
「僕は…アイスコーヒーで。」
雄大は小さな声で注文した。
「ご注文は以上で?」
「雄大君、それだけでいいの?」
加藤は急にいつもの優しい笑顔を雄大に向けた。
「えっ…はい。」
「ここ、パンケーキが有名なんだ。甘いの大丈夫?」
「はっ…はい。でも…」
「このイチゴのパンケーキも。」
加藤はメニュー表を指差しながら、ウエイトレスに注文した。
「かしこまりました。少々、お待ちくださいませ。」
ぺこりと頭を下げて、ウエイトレスが去っていった。
「ここの喫茶店、よく来るんだ。ランチも美味しいよ。」
混み合う前なのか、空席が目立っていたが、全部木で出来た店内は、モダンでゆっくりとした時間が流れていた。
窓際に座ったので、外は忙しく動く人がよく見えた。
ちらりと向かいの席を見ると、加藤は再び窓の外に目をやっていた。
(なんて切り出したらいいんだろう。。)
そう思っているうちに「お待たせしましたー。」とウエイトレスがコーヒーを持ってきた。
雄大は緊張しながら、アイスコーヒーに口をつけた。
「困ったな…」
ポツリと加藤のつぶやきが聞こえ、雄大はハッと顔を上げて、姿勢を正した。
「す、すみません。僕のせいで…」
「??」
加藤はキョトンとして、首を傾げた。
「迷惑かけちゃって…本当にすみませんでした!」
ガコン!!
雄大は勢い余って、テーブルに額をぶつけた。
「痛っ!!」
「わっ!雄大君、大丈夫??」
加藤は急いで雄大の顔に手を伸ばした。
「大丈夫…です。アイテテテ…」
雄大は額に手を当て、空いた手を加藤に振った。
「…どうしたの?謝ったりして。」
「えっ…と…だって…加藤さんの会社に行って…」
手を当てたまま顔を上げるとまだ首をかしげる加藤がいた。
「会社に来てくれたんでしょう?」
「はっ…はい…。でも偶然見つけて!!すごく立派な会社だったんで、ちょっと中みたいな〜って。。」
「それって、俺が働いてる会社だから?」
加藤がニコニコして身を乗り出してきた。
「は…はい。」
雄大はその反応に何度も瞬きをした。
「えっ〜嬉しいな〜。」
「嬉しい…ですか?」
加藤は肘をついて、両手で顔を包んでいた。
「だって、雄大君が見に来てくれたんだよ。それって俺に会いに来てくれたの??」
「いや…あの…迷惑かけるつもりは…ただ興味があって…加藤さんがどんなとこで働いているのか…」
目の前の大人がニコニコした顔で見つめてくるので、雄大は恥ずかしくなって、目を逸らした。
「興味か〜。嬉しいな〜。」
楽しげにコーヒー啜る加藤を雄大は恐る恐る上目遣いで見た。
「でも…さっき困ったなって…」
加藤はコーヒーを置いた。
「あぁ、あれ?あれは黒田さんに見つかった事だよ。あの人、俺の一個上の先輩なんだけど、仕事は出来るけど、誰でも手を出すって有名なんだ。だから心配でね。。」
加藤はじっと雄大を見た。
「えっ…でも…手を出すって女の人にでしょう?」
加藤はため息をついて、背中をソファーにつけた。
「まぁね。今までは受付嬢から他社の子まで全て女の子だったけど…雄大君は危ないから。」
クッキリとした綺麗な目が真っ直ぐ見つめてきた。
「危ないって…?」
「雄大君は可愛いから…なんとか酒の席は避けないと…」
渋い顔した加藤がコーヒーをすすった。
(黒田さん….パワーの有る人だった。ああいうお客さんは、大抵断るのは至難の技だ。)
ふと自分の培って来た回避能力なのか、本能的に赤信号を点滅させた。
「大丈夫です。」
「えっ?」
雄大は自分の胸に手を当てた。
「僕は男です!きっと手を出したりしませんよ!それに…」
加藤が心配そうな顔をしていた。
雄大はごくりと唾を飲んだ。
「僕は加藤さんが好きですから!」
ぱっーと加藤の顔が緩み、手を伸ばしてきた。
「ゆう…」
「お待たせしましたー。イチゴのパンケーキです。」
まだ何か言いたげな加藤が渋々手を引っ込める姿は見え、可愛かった。
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