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隣は危険?
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「募金、お願いしますー!」
「皆さんのご協力をお願いしますー!」
「おや、君可愛いね〜。」
チャリーン
「ご、ご協力、ありがとうございます。」
雄大は消え入りそうな声で返した。
ピンポンパンポーン
『皆様、本日はご来店、ありがとうございます。只今、各入り口前にて、〇〇募金を開催しております。皆様のご協力をお願い申し上げます。』
「なぁ、お前、女…だよな?声低いけど…」
横に立っていたCDショップのピンク色の制服を着た赤い髪の男が雄大に小声で声をかけてきた。
「男です。。」
雄大は唇をかんだ。
「だよな。いや、迷ったんだけどな。そんなワンピース着てるしさ。あっ、ご協力お願いします。」
「…お願いします。。」
(僕だって、こんな格好したくないよ!)
みんな興味深げに迷った顔で雄大に募金していってくれる。
「まぁ、みんな制服とか店の商品とか付けて着てるけど、お前んとこはどこの店舗だ?」
客は途切れ途切れモールに入ったり、出たりしていた。
「…3階のroom serviceです。」
「!?あそこ、雑貨屋だろう?なんでそんな格好?」
口を開きたく無い雄大は、ぶすっとした顔で「うちの服ですよ。」と言った。
15分前
「今日、募金活動するって、モールから通達があったんだ!」
店長は頭を叩いた。
「えっ??」
「15時から1時間。みんな制服や店の物を身につけてくるように言われてたんだ。」
雄大はベチョベチョになったシャツを見下ろした。
「15時?私はもう上がりよ?」
菊池が逃げるように身を引いた。
「そうだ〜私は野上さん見とかないといけないし〜。あの子どももどうにかしないと〜。」
雄大は焦った。
「あの子どもは逃げられたし、どうにもなりませんよ!?そうだ!の、野上さんが行けばいいじゃないないです!?」
「いや、まだモール内わからないだろうし。。あの格好だしな。」
(うっ…確かにあれはうちの店のイメージじゃない。)
「あと、モール本部との交流もないから、まだ無理だよ〜。」
「で、でも…僕はこの通り!」
雄大は自分の姿を指で指した。
「そうだな〜。あっ!そうだ!雄大君、これ!」
店長はそばにあった、麻のワンピースを手に取った。
「これ着よう!先週からの新商品だし。」
それは先週から置き始めた衣料品だった。
「これ…?」
薄いモスグリーンの半袖ワンピースは、裾と襟ぐりのところに鳥の飛んでいる小さな柄の入っていた。
「いや…」
「似合うよ!ほら帽子もかぶれば!」
ほいっとまたしても近くにあったレディース用の麦わら帽子を被せられた。
「うんうん!」
店長は満足気に頷いた。
「……」
ワンピースは雄大に当てると、膝上くらいになった。
「…いや…」
「特別手当あげるから!」
「…い…」
「頼む!雄大君しかいないんだ!!」
「…うっ…」
「店長!化粧と足はなんかレギンスか何にか履かせなきゃ!」
「おおっ!さすが菊池さん!」
「やだぁー。」
現在
(だってどうせ着替えないし…。でもこれってルームウエアで売り出したよな??レンギンスが張り付いて気持ち悪いし、窮屈だなぁ。)
帽子で顔が隠れるようにして、ため息をついた。
(でも募金活動はいいことだ!頑張ろう!)
「ご協力お願いします。」
雄大は勢いをつけて、顔を上げた。
「あっ……」
知った顔がすぐそばにいた。
「雄大。あんたにこんな趣味があったとはね。」
「母さん…」
雄大は口を開いて、固まった。
「まぁ、ちゃんと働いてくれてるなら、お母さんはそれでいいわ。」
チャリーン
雄大は赤い顔で俯いた。
「今日はお母さん、班会議だから夜いないからね。詩央里にも言っといて。じゃあ。」
「あ、あい…」
隣の男が同情するように肩を叩いた。
(身内かよー!キツイわー!)
「ご協力お願いします!」
人の波がようやく途切れてきた。
「あと、5分だな。」
誰かがそう呟き、雄大は腕時計を見た。
「あとちょっとだ。よかった。。」
心からそう思った。
「俺も良かった。お前が隣で…」
隣の男は急にモジモジして、雄大に顔を向けた。
「?」
「あのさ、今度さ…」
「雄大君?」
黒のスーツを着た成康が少し向こうから、手を振りながらやってきた。
「か、加藤さん!?」
みんなの前で、下の名前を呼ぶのは恥ずかしく、つい加藤と言ってしまったら、成康はぷっとふくれ顔になった。
「成康だよ。」
目の前に立たれるとその端整な顔立ちについ紅くなってしまう。
「な、成康さん。。」
「ふふっ。どうしたの、その格好?」
(はっ!?)
「見ないで下さい!その…これは…」
雄大は募金箱で顔を隠した。
(なんでこんなタイミングで!?)
「可愛い。可愛くて、不安になる。」
雄大は顔を上げた。
見ると成康は財布を取り出していた。
「不安?」
「自覚がないからもっと不安になる。これ終わったら、休憩時間?」
「あっ、はい。もう終わります。
「じゃあ、そこのベンチで待ってるから。」
成康は財布から千円札を抜き、雄大の持っていた募金箱に入れた。
「あ、ありがとうございます。」
成康は雄大の耳元に顔を寄せ、隣にも聞こえる声で囁いた。
「向こうから見てるから。」
にっこりと笑って成康は去っていた。その笑顔に周囲が一瞬、ざわついた。
「あっ、さっきの話…」
雄大が思い出したかのように隣の男に顔を向けた。
「あっ…いや…なんでもない。。」
シュンとした男に雄大は「?」と首を傾げた。
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