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ラブホ街
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ネオンがピンク色に輝き、背の高いビルから、お城のような外観のホテル。
通りを入るとアミューズメントパークのような錯覚まで覚える。
「……」
しかし、横を見ればデカデカと休憩/宿泊/時間/料金の看板が立てられている。
雄大はドギマギしながら、もたれかかって歩く老若男女の間にいる成康を追いかけた。
(信じたくない!)
その思いだけで歩いていた。
「まだ追うの?」
黒田の言葉に雄大はハッとしたのと同時に成康達がひとつのラブホテルの前で立ち止まった。
「ほら、こっち。」
黒田に手を引かれ、成康達がいる隣のホテルの塀に身を潜めた。
女性が何やら成康の手をとって、揺らしていた。
「2人が入ったら諦める?」
耳元に黒田の息がかかった。
「諦める…?」
頭の中がぐるぐる回っていた。
黒田の手がずっしりと雄大の肩に置かれた。
「2人は付き合ってたんだよね?」
(バレてた!!)
口が渇いて、心臓がバクバクした。
「初めて会った時、親戚の割には距離が近い感じだった。」
黒田は後ろから雄大の唇を指で撫ぜた。
「それに君は加藤のドストライクのタイプだし。」
「は、離して下さい。」
黒田の腕が雄大の腰に回った。
「俺は男もイケるから。」
そういって黒田は首に吸い付いきながら、下半身を雄大に押し付けた。
「や、やめて下さい!」
「ん?ここのホテルに入る?」
もがいても離してくれない。
次第に黒田は雄大のパーカに下から手を入れて、身体を弄ってきた。
「やだ!やめて!」
「ふっ、可愛いなー。君は。」
「!?」
ギュッと乳首を摘まれ、雄大は驚きと痛みに泣きそうになった。
「んっっ!やぁー!」
「あんまり騒ぐとここでしちゃうよ。ほら、ホテル行く?」
雄大は全身で首を振って、黒田を睨もうとした。
「何で…こんな…」
「そりゃー、君を抱きたいって思ったから…ってもしかして加藤とはまだだった?」
黒田は初めっからわかっていたような意地悪なクスクス笑いをして、雄大の耳を噛んだ。
「あっ…」
「ほら、あっちも楽しんでるんだし、俺たちも楽しもうよ。」
(成康さん…)
もう建物に入ったと思っていた成康が、まだホテルの前にいるのがちらりと見えた。
その時、成康は厳しい顔で首を振っていた。
(あっ…)
急に力が湧いてきた雄大は、後ろに巻きついた黒田の足を思いっきり踏んだ。
「あイテェ!!」
身体が軽くなって、雄大はその場から離れた。
「ご、ごめんなさい!」
しゃがんで痛がる黒田を置いて、雄大は小路地から飛び出した。
「男同士のセックスのやり方教えて欲しければ、いつでも教えてやるからなー。」
黒田のからかうような声が雄大の背中に向けられた。
(なんなんだよ、あの人…)
雄大はネオンの光を顏で浴びながら、前を見た。
見ると成康の手をとって、何やら誘おうとしている女性とその手を離して欲しいような厳しい顔をした成康がいた。
「な、成康さん!!」
周りを歩いている人が振り返るような大きな声で叫んだ。
「ゆ、ゆう…雄大君??」
驚いた顔の成康が、女性の手を払いのけた。
「成康さん!」
雄大は飛び込むように成康の腕に飛びついた。
「どうしたの?こんな所に?」
「嫌です!僕!こんなの嫌です!!」
「なに?この子?」
女性の鋭い声が聞こえた。
「僕は…Fカップもないけど…このままじゃ…諦めきれないんです…こんな終わり…」
悔しくて言葉が出てこなかった。
女性は怒ったような顏で携帯を取り出した。
「何?何なの?酔っ払い?学生さん?警察に言った方がいいわね。」
「違う…」
雄大は泣きそうになった。
「待って。」
温かい手が雄大の手に重ねられた。
「この子は俺の大事な子なんだ。」
「でも…未成年でしょう?こんなトコにいたら…」
「この子…雄大はもう20歳超えてる。それに俺は渡辺さんとは付き合えない。ここにだって、渡辺さんがこの通りを過ぎた所が家だって言うから通っただけだ。君とホテルに入る気はない。」
渡辺の顔が見る見る赤くなり、目がつり上がってるのがわかった。
「そう!!」
渡辺は雄大の顔を見てフンッと鼻を鳴らした。
「じゃあまた、加藤さん!!」
「気をつけて。」
カツカツカツとヒールを鳴らしながら、渡辺は去って行った。
「あ…大丈夫….ですか?彼女?この辺、危なくないですか?」
「あんだけ踏みしめて歩いてたら、虫も逃げ出すよ。また後で電話してみるよ。それより髪ボサボサだよ。」
雄大は乱れていた髪を手で整えた。
「急いで…来たから…」
「ふーーん。」
雄大は首元を隠すように首をすくめた。
(キスマークとか付いてないよな…)
ネオンの光が当たった加藤の表情は柔らかで雄大はひとまずホッとした。
「で?俺をつけてきたの?」
「う、うん…」
「どうして?」
「だって…成康さん…お店に全然来ないし、連絡ないし…」
「それでつけてきたの?」
うつむく雄大の頭の上まで成康が迫ってきた。
「会社行ったら、成康さんが女の人と出てきたから…もう僕は嫌われたかと…思って…」
ホロリ
涙が出た。
思うだけで泣きそうだったのに、口にすると泣いてしまった。
ギュッ
成康の長い腕が雄大の身体をしっかりと抱きしめた。
「な、成康さん?」
「嫌いになんかならないよ。」
胸に顔を埋めると青い爽やかなコロンの匂いがした。
「ただ…雄大君はあのバイトの男の子と仲良かったから、ちょっと迷っていたんだ。」
「バイト…上村君?」
「うん。。」
(やっぱり誤解させちゃった….)
「上村君とは…全然、むしろ苦手なんです。」
「あっちは俺に敵意むき出しだったけど…でも違うんだね。」
「違います!」
雄大が力を込めて言うと成康は抱き締めていた腕を外し、雄大と向き合うように身体を起こした。
「…よかった!」
その満面の笑みに雄大は久々に心が温かくなった。
「はっ…僕もよかった。。デートかと思って。。」
「あぁ、渡辺さん?いや、なんか仕事で相談あるからって。断ったんだけど、俺にも関係あるとか言われたからさ。でも行ったら全然仕事の話はかすりも出なかった。まぁ、よくあるパターンだけど。」
「よくあるの!?」
雄大は青くなった。すると、成康はニコニコっと笑って、雄大の頬にキスをした。
「安心しなさい。もう行かないし、心は雄大だけのものだよ。」
成康はそう言って雄大の身体を自分に引き寄せ、唇を重ねた。
「あっ、アルコールの匂いがする。」
目を閉じていた雄大はハッと目を開けた。
「ワイン飲んだの?」
「す、少しだけ…」
「レストランにも付いて来てたの?」
雄大はビクリとした。
「う…うん。」
「1人で?」
(そういえば…黒田さん…)
目を動かすが、黒田の姿は見えない。
「うん。。」
「早く気付けばよかったね。」
クスクスと笑いながら成康は再び唇を重ねた。
「どうしたの?」
不思議な顏で見つめてくる成康に雄大は後ろめたさを消すように頭を振った。
「なんでも…てかここ外ですよ。」
興味津々に見てくるカップルもいた。
「じゃあホテル入る?」
雄大はかぁーと赤くなった。
「そ、そんな!僕、まだ勉強してないし、お、男同士ってどうやってすればいいか…」
あたふたする雄大に成康はくくくっと笑った。
「わかった。俺も今日はジェルも持ってないし、明日も仕事だから、諦めるよ。」
成康がポンっと雄大の背中を叩き、歩くよう促した。
「ジェ、ジェル?」
「そっ!通販で買った潤滑油。」
「潤滑油?」
成康は目を細めて、雄大の頭をポンポンと叩いた。
「今度、使い方見せてあげる。」
「…う、うん。」
「潤滑油って、こうやって使うのかーー!」
雄大はパソコンの前でひぃーと頭をかいた。
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