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声の行方
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イタイ…頭が…クラクラする…
「雄大君!!」
成康の声が聞こえる。
「誰か来てくれ!」
バタバタと足音が聞こえる。
「椿さん!」
上村君…
「雄大君!!あぁ、どうしょう!」
「店長さん、俺が運ぶからどこか横になれる所は?」
「救急車呼んだ方が…」
「…いや、たぶん脳震盪だと思う。大事にしたらモール内もパニックになるから、モールに救護の人とかいないんですか?」
「電話してみます!」
「俺も手伝います。」
「……じゃあ足を持ってくれるかい。よし…行くよ。1、2、3!」
「…で…かえ……」
「お……ですよ!」
(…ん…)
「……だよ。」
「…で……だ!」
薄っすらと目に光が入る。
光とともに2つの声が耳に入ってきた。
「声が……いよ。」
「俺が連れて帰ります!」
(はっ!?)
自分の事を話しているのがわかり、雄大はギュッと目をつぶった。
「はぁー、君は未成年だろう?俺がタクシーで送るから、君は帰りなさい。」
「貴方は椿さんの自宅もわからないでしょう?うちのスタッフなんでうちで連れて帰ります!ちなみに!個人情報なんで、住所はゼッッッタイ、教えません!」
「だから、声が大きいって。このまま、雄大君が起きなければ、病院に連れて行くから。君は帰りなさい。」
「俺はあんたみたいな人に椿さんをやらない!俺、見たんですよ。」
ガタンと何かの動く音がして、雄大はついと眉毛が動かしてしまった。
(見たって…?)
「貴方が女性といるのを見たんです。」
(女性!?)
「女性って…俺だって女性と歩くことあるよ。」
あしらうような成康の声がした。
(そ、そうだよな。。)
「じゃあ、貴方は女性と歩く時は必ず、腕を組んで歩くんですか?」
(腕…組む!?)
「あれは…」
成康のくぐもった声が聞こえた。
「”ミサ”って呼び捨てしてたでしょう?しかも日曜日の午後に腕を組んで、ソフトクリーム食べさせ合ってたでしょう!俺、見たんですよ!」
(”ミサ”!?)
息が止まるかと思った。
「彼女がいるんなら、椿さんに関わらないで下さい!
上村の強気の声が頭に響いた。
(”ミサ”ってあの…元カノの…)
身体の痛みが思い出したかのように強くなった。
「だから?」
冷たい成康の声が部屋中に響いた。
(だから…?)
「だから…椿さんには近づかないで下さい!」
必死の上村の声がする。
一瞬、部屋がシーンとした。
「俺が何人と付き合おうが、君には関係ないだろう。」
その声は成康ではない違う人と上村は話してるんじゃないかという錯覚さえ覚えた。
(何人…?)
「それを…椿さんに言ってもいいんですか?」
「……言ってもいいよ。」
「貴方達付き合ってんでしょう!?いいんですか!?」
心臓がバクバクしている。心音が聞こえないか心配になるくらい。
「このままの関係で続けるか、選ぶのは彼だ。」
まるで他人事のような言いよう。
雄大はギリギリっと歯を食いしばった。
ガチャ
「あっ、もう閉店だけど…まだ目を覚まさない?」
店長の心配そうな声で雄大は少し力が抜けた。
「…まだです。」
「そっか…じゃあ、今からモールの主任と私で救急に連れて行くよ。すみません、加藤さん。お客様なのにこんな時間まで付き合わせて。」
「いえ、あの、経過を明日、聞きに来てもいいですか?心配なので。」
成康の声なのに、話し方なのに、受け入れられない不快感に襲われた。
「勿論です。さぁさぁ、もう正面締まりますので。」
ワキワキ言いながら、店長と成康の声が遠ざかっていく。
(こんなの…ないよ。。)
頭がイタイ、肩がイタイ、足がイタイ、心が…捻じ曲げられたようにイタイ
吐き気と涙が出そうだった。
「…大した自信だな。。」
上村の声がぽつりと聞こえ、雄大はハッとして、必死で眠っているのを続けた。
しばらく、シーンとしていた。
カツカツカツ
(!??)
急に頭に温かい感触を感じた。
ゆっくりと額から撫でられる手の感触。
(あっ。。)
優しい手の感触にホロリと涙が落ちた。
(やばい。。。)
「……」
しかし、上村は何も言わず、雄大の頬に同じ手の感触を感じた。
痛みが少し和らいでいくような気がした。
(あったかい…)
雄大は目の力を抜いて、するがままにさせていた。
「……」
急に唇に重い感触が乗ってきた。
それは柔らかく、優しく吸い込まれ、チュクっと小さく音を立てた。
目を開けそうになった時、ようやく柔らかい感触が唇から解放された。
「あんたは…誰を選ぶんだ!」
(僕…?)
バタン
ドアの閉まる音がし、人の動く音が聞こえなくなった。
雄大はゆっくりと目を開けた。
(天井が…歪んでいる。。)
特に痛む左側をさすりながら、雄大は呟いた。
「……痛い。。」
雄大は両手を目に当てた。
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