アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
新人さん
-
「牟田 豊美(むた とよみ)です。よろしくお願いしま
す。」
彼女が軽く頭を下げた時、ドスンと音がしたような気がした。
「よ、宜しくお願いします。」
おずおずする雄大に対して、牟田はニカッと笑った。歯にはベタに青海苔が付いていた。
「じゃあ、牟田さんは雄大君に任せたから。」
店長はポンっと雄大の肩を叩いて、安心したような顔でその場を離れた。
「えっ…店長?」
(まぁ、野上さん任せられるよりいいけど。。)
「で、これはここに…で、これは…」
「あっ、イイですよ。椿さん、足挫いたって聞いてますから。よいしよーー!」
牟田は逞しく、段ボールを持ち上げた。
「あ、ありがとう。。」
ニカッと笑うとやはり青海苔が見えた。
(初日にしかも、若い女の子に異性からそんな指摘されるのは…)
ぐるぐると考えあぐねていていると、牟田はドシドシと前を歩いて行った。
「あっ、牟田さん!そっちじゃない!汗」
あの日の足の痛みはまだ続いている。
病院に行って、MRIを撮ったり、足のレントゲン撮ったりしたが、頭を打った影響もないようだし、足は少し捻挫してるだけだった。
でも痛かった。
雨が降ると頭が痛いし、足の腫れは引いてきたのに重くて痛いし、心臓は弾けそうなくらい痛い。
(考えないようにしないと!)
パンっと両手で頬を叩いた。
(仕事、仕事!)
やっぱり仕事している時はいい。こうやって前向きになれるのに、1人になると、自宅の部屋でもトイレでも、シーンとした世界に泣きたくなってしまう。
『”ミサ”って呼び捨てしてました。』
まるで自分もその場面を見たかのような衝撃だった。
目の前を”ミサ”が加藤にしな垂れかかれ、指を絡めて歩く姿。
その絵のようなカップルが自分の目の前を歩く夢を何度見た事か。。
雄大はギュッと胸のあたりを握った。
「椿さーん、ここ!!ここ通らないんですけど!」
「あっ、今行くー!」
雄大は頭を振りはらい、痛む足を気にしながら走った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 147