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出勤時の気まずさ
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「お疲れ様です。椿さん。」
バックヤードから出てきたら、無表情の上村がいた。
「えっ?」
振り返ると売り場の時計は午後4時を指していた。
「ん?」
もう一度、上村と時計を見た。
「あれ?」
ジッと上村に見られて、雄大は言葉を詰まらせていた。
(まだ心の準備ができてないのにー)
上村は持っていた段ボールを下ろし、軍手を外した。
「間違ってないです、4時です。店内を本格的に夏らしくする棚替えをするからって、店長に早めに呼ばれたんです。天井のPOP変えるからって。」
「あっ…」
雄大はまだ湿布の巻かれた左足を見た。
(毎年、僕の当番だったのに…)
少し寂しい気持ちが込み上げてきた。
「だ、大学忙しくないの?こんな時間に来て。」
雄大はできるだけ平然を装うように心配ですよという表情を作った。
それをシラッとした顔で見ていた上村は、わざとらしく音を立てて、そばにあった梯子を動かした。
「仕方ないですよ。うちにはおじさん店長と女子が4人しかいないので!男の俺が頑張らなきゃ。」
「4人……?」
頭の中で1人、2人、3人…と名前を数えていった。
「3人……店長…」
雄大は上村に歩み寄って、キッと睨んだ。
「4人目は誰だよ。」
上村は無表情のまま雄大を見下ろした。
「わかるでしょう?もう少し筋肉つけたら、男だって認めてあげますよ。そんな細足じゃあまた怪我しますよ。」
「ぐぅ。。」
「でも椿さん、筋肉とか付かない感じですよね。腕とか腰とかも細いし、ちゃんと食べてます?」
図星が頭に突き刺さった。
「余計なお世話だよ!僕だってちゃんとトレーニングすれば…大体、仕事が不定期だから、難しんだよ!ジムとか行く余裕もないし…僕だってやればしたいよ!」
「キャンキャン言い訳しないで下さい。小型犬みたいですよ。」
耳を塞ぐ上村に雄大は再び「ぐぅ。。」と唸るしかなかった。
(やっぱりこいつは僕の事、ただ馬鹿にしたいだけだ!最悪だよ!あんな事までさせたくせに!こいつはなんで平常運転なんだよ!僕は詩央里にまで相談したのに!)
ワナワナしそうな自分を抑えようとしていると、ポンと頭を叩かれた。
「まっ、そういう華奢な身体がいいんですけどね。」
雄大は「はっ?」と顔を上げた。
すぐ側には強い瞳の上村がいて、ドキリとした。
「抱き締めると折れそうなトコとか。触れるのが怖いけど、壊してみたいトコとか。それを自分だけのものにしたいトコとか。」
その瞳に雄大は背中がゾクゾクとした。
「椿さーん。」
ドスドスと向かいから、牟田が走って?きた。
上村は雄大から目を離し、ガシャンと梯子を持ち直した。
「椿さん、返品、返品したいって、、文句言って、、、じい、、爺さんが…」
「分かった、分かった。お客様ね。。」
「おぎゃくざま…はぁはぁはぁはぁ。。」
過呼吸を起こしそうな牟田を宥めながら、まだ残る強い視線に手が震えそうだった。
(どう言う…意味なんだ…?)
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