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空腹は拷問
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与えられた時間は30分。
地下のデパートでパンを買おうかと思ったが、エスカレーターを地下まで降りるまでに倒れてしまいそうで、雄大は仕方なく、途中のフードコートの階で降りた。
夕方近くだったが、フードコートはまだ賑わっているようで、小さな子供がわあーと走っていた。
(何、食べよう…)
ふと横を通り過ぎる男性のトレーからフライドポテトの油の匂いがした。
雄大は口の中に唾がたまるのがわかった。
雄大は小走りに一番近いかった、ハンバーガー屋に向かった。
ハンバーガー屋に近づくと前に5人ほど人がいて、カウンターも1人しかいなかった。
雄大は遠くのドーナツ屋やうどん屋を見たが、フラつく足取りで列に並んだ。
(これ以上は歩けない…)
冷や汗を拭いて、雄大は早く順番が回ってくるのを祈った。
「だからーこれはこのセットでピクルス抜いてー」
雄大は胃のキリキリした痛みが強くなった。
前の人がイライラした感じで片足をバタつかせてるのを見ていると、地面が歪みそうになった。
(これ…ヤバイ…)
雄大はうずくまりそうになり、体勢を崩してしまった。
「ちょっと何してんのよ!なに?ゲロるの?」
雄大の後ろに並んでいた金髪の女性が、跳びのきながら、雄大に怒りをぶつけてきた。
(わかってる…わかってるけど…)
キリキリと胃が痛む。
「すみません!」
遠くで声がしたと思ったが、実際はすぐに近くに声があったようで、その声は雄大の腕を掴んだ。
「ごめんなさい。お先にどうぞ。」
雄大は列から引っ張り出された。
金髪の女性はさっきとは違い、少しはにかんで会釈までした。
「??」
ズルズルと引っ張られる途中、雄大は虚ろな目で引っ張られる腕の先を見上げた。
「加藤…さん。。」
鼻筋の通った成康の斜め下からの横顔だった。
雄大はズルズルと近くの椅子に座らされた。
成康は椅子に座った雄大と同じ目線の高さに膝を曲げて、大きく息を吸った。
「どうしたの?」
「えっ…と…」
成康の少し怒ったような顔でじっと雄大を見た。
「具合悪いの?」
雄大は何度も瞬きをして、最終的には縮むようにお腹を手で押さえた。
「お腹……すき過ぎて…倒れそうなだけです。。」
その時の成康の驚いた顔に雄大は、恥ずかしくて両手で顔を隠した。
ポンポン
頭を軽く叩かれ、手を外すと成康は「待ってて」と言って、その場から離れた。
5分後
雄大の前には温かい素うどんが出されていた。
「……」
雄大は何度もうどんと成康を見た。
「ハンバー……」
「どうぞ、冷めるよ。」
成康が手を差し出したため、雄大は渋々と割り箸を割った。
「素…うどんですか…?」
「うん。」
なんのトッピングもないうどんに雄大は少々ガッカリした。
ちらりとうどん屋を見ると”海老天””ゴボウ天””牛肉””いなり寿司”etc…看板が見える。
雄大はススッとうどんの入った器を成康の方に動かしながら、口を開いた。
「海老付け足しても…」
「ダメ。脂っこいもの食べたら、胃がびっくりしちゃって、後で痛くなったりするんだから。今は素うどんだけにしときなさい。」
「…はい。いただきます。」
雄大は大人しく器を自分の方に引き寄せた。
1口食べると箸が進み、2口食べると冷や汗が止まり、汁を飲み干すと頭がはっきりして、身体が元気になるのがわかった。
その間、約5分しか経っていなかった。
「いい食べっぷりだね。」
ナプキンで口元を拭うと目の前には柔らかい顔をした成康がいた事に気が付いた。
「あっ、すみません。」
雄大は急いで自分の財布を出して、小銭のチャックを開けた。
「おいくらですか?」
「いや、いいよ。」
頭がはっきりしてくると脳が回転し、急に色々と思い出し、身体が萎縮し始めた。
「いえ、そういう訳にはいきません。おいくらですか?」
目を合わせないままの雄大の意地がわかったのか、成康からため息にも似た息を吐いた。
「わかった、350円。領収書は捨ててしまったけどもいいかな?」
「構いません。……じゃあこれで。」
雄大は100円玉3枚と50円玉1枚を成康に差し出した。
「……」
長い指の手が雄大の前に差し出された。
雄大はそのなめらかな手に触れないように小銭を落とした。
「ありがとうございました。」
成康は受け取った小銭を確認せずにズボンのポケットにに押しこんだ。
(怒った…かな?)
雄大はこそこそっと成康の顔を上目遣いで見た。
成康は何か言葉を探しているのか、テーブルに肘をつき、せわしなく、手を重ねたり、指を絡めたりして、周りの風景を見るともなしに見ていた。
(でも僕も怒ってるもん!)
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