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急なお誘い
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今日は疲れた……
風呂上がりの濡れた髪のまま、雄大はぐったりとソファに身を沈めた。
夏休みに入った途端、モールはてんてこ舞いだった。
食品レジでは年齢確認の客が増え、迷惑駐輪で駐車場係の人はなぜか駐輪場にいる始末。
万引きも増え、痴漢行為も起きて、モールの本部には常に警官が誰かを尋問している姿があった。
(忙しい方が何にも考えなくていいけど…)
雄大は自分を慰めるように目をつぶった。
両手に缶ビールを持った詩央里がリビングに現れた。
「あっ、雄大。あんたが風呂入ってる間、携帯が何度も鳴ってうるさかったわよ。」
詩央里は眉毛のない顔を歪めて、テーブルにあった雄大の携帯を顎でしゃくった。
「?」
雄大はガシガシっとタオルで頭を拭いて、携帯を手に取った。
080-××××-××××
「知らない番号だ。」
「ふーん。」
詩央里は興味なさそうに、プシュっと缶ビールの開いた。
雄大はジッと番号を見つめた。
(誰だろう…?思い当たる人がいないな。職場のみんなは登録してるし。。友達…最近会ってないけど…)
時計を見ると22時を過ぎている。
(こんな時間に呼び出してくるような知り合いもいないし…)
そう思っていたら、携帯がヴィーーーと動き出した。
「わっわっ!」
雄大は一度携帯を落とし、急いで拾い上げた。
「も、もしもし!」
『あっ、ようやく繋がったよ!雄大?』
(呼び捨て!?しかもこの声は…)
「く、黒田さん!?」
『おう、ったく。この俺様に何度かけさせてんだよ。』
「俺様って…てか僕の携帯番号…」
『細かい事は気にするな。お前がイタリア料理屋で席を外した時に勝手に見たんだよ。』
「えっ??」
『そんな事より、雄大、明日、C町の花火大会行くぞ。』
「はぁ?」
雄大の大きな声に詩央里が不機嫌に振り向いた。
雄大はそっと電話口に手を当て、リビングを出た。
「そんな急に…なんで…?」
『花火大会に加藤は元カノの行くらしいぞ。』
「は!」
雄大は手で口を押さえた。
「な、なんで…そんな事を。。」
心臓が急に飛び出すかと思った。
『あいつの携帯にメッセージが入った瞬間にデスクの前にいたもんだから、つい目に入ってね。』
「つい…ですか?」
『細かい事は気にすんな。明日は是非、浴衣での参加を期待したいねぇー。』
「…浴衣なんで持っていません。」
雄大は電気の点いていない廊下の壁にもたれた。
『相手は浴衣で来るはずだぞ!お前のその作業着Tシャツで勝てると思うのか?』
「作業着Tシャツ!?」
『とにかく浴衣で来れないんなら、女装してこいよ。じゃないと俺は連れて行かないからな。』
「はっ!?なにその二択!?」
『祭りに行くのにヨレた子ども連れてくのは嫌だからなー。頼んだぜー、兄弟。』
「ヨレた…って勝手に決めないでください!」
『8時にC駅に集合な。んじゃあな、アデオス!チュッ!』
「あっ!ちょっと…」
(切られてしまった…)
雄大は暗い廊下に座り込んでしまった。
「花火…大会…?」
後半の浴衣の下りで話が飛んでしまったが、成康は”ミサ”と花火大会に行くと言う事実に頭が真っ白になりそうだった。
「ちくしょう…」
雄大は自分の膝を抱え込んだ。
自分はまだ成康の事が気になっている事に改めて腹が立った。
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