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大輪の花火
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酒よー♪父よー♪母よー♪
聞いたことのない演歌の歌が聞こえる。
雄大は頭にお面、左手にヨーヨーと綿菓子の袋を持ち、右手に持ったイカ焼きを持ち、大きな街頭の下の台に座っていた。
「黒田さん、どこ行ったんだ!?」
ナンパの現場を見送って30分。
雄大は屋台の大人達に心配がられながら、箸巻き食べたり、ヨーヨー釣ったり、綿菓子もらったりして、祭りを満喫していた。
(そういえば…こんな夏の行事、ずっと来てなかったな…)
人混みは嫌いなのに祭りの人混みは特別だった。みんながみんな楽しそうで、笑っていた。
(もう一回射的しようかなー)
ふと、目の前を子供達がわっーと駆け抜けていった。
「花火、始まるってよ!!」
その掛け声に雄大は台から降り、引かれていくように子供達の後をついて行った。
川沿いには沢山の人が集まっていた。
ドンッ!!
雄大がついたときには、1発目の大きな花火が上がり、周りからは感嘆の声が溢れた。
(わあっー)
雄大は少しでも前で見ようと人集りに近づいた。
2発目が上がるとそれに覆いかぶさるように3つ、4つ、5つ…数え切れない小さな花火が打ち上がった。
しばらく連打が空を彩った。
パラパラパラパラ
空から名残のように火花か舞い降りた。
「綺麗…」
雄大はつい呟いた。
「綺麗だね。」
一瞬のほんのわずかな静寂の中から聞き覚えのある声がして、雄大は身をすくめた。
(今の声……)
急に今日の自分の目的を思い出した。
雄大は慎重に目を動かした。
心臓が高鳴り、周りの喧騒が全く聞こえなくなった。
ドン!
薄暗い中、大きな花火が上がり、下界を大きく照らし出した。
ドン!
前の前に背の高い男性の姿が見える。
ドン!
前の人がさらに前に行こうとし、移動を始めた。
ドン!!
雄大はその場から動けず、花火を見上げる2人の後ろ姿を見つめた。
ドン!!
成康の横の女性は浴衣を着て、Tシャツにジーンズの成康に寄り添っている。
(こんなのって……僕はこれが見たくて誘いに乗ったのか…?)
心臓が速くなり、喉が苦しくなる。
女性は成康の肩に頭を乗せ、腹部を大事そうにさすっていた。
「来年は3人で見に来ようね。」
ドン!!!!
慈しむように腹部を撫でる彼女の姿を成康は優しそうに見つめていた。
雄大の前にいた人がすっかりいなくなり、その距離はたかが、2歩ほど。
雄大は急いでお面を被り、くるりと2人に背を向けて、から遠ざかろうとした。
(あれは…まさか…)
”来年は3人で見に来ようね”
腹部をさする女性の姿。
(子、子ども!?)
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