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ようやく見つかるもの
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「いらっしゃいませー。」
引きずられなが、小さなカフェに入ると、成康はすぐにキョロキョロしていた。
店には3組ほど客が入っていた。
(”ミサ”さんを探してる?)
成康はハッと目を店の奥に向けると唇を引き締めて、ズンズンと奥へと進んだ。
木の壁や小さなテーブルが可愛らしいお店だった。
でも雄大は手を引かれながら、鉛をはめられた足のような重さで先へと連れて行かれた。
(なんで…なんで…)
「あっ、成康君、ここよ。」
「あぁ。」
甲高い声が聞こえた。あの時、レンタルビデオ店で聞いた声。
「その子誰?弟…いたっけ?」
そろそろと目を上げるとオレンジの色の服が見えた。
そして、不審な顔をした髪の長い茶髪の女性。
(あっ…やっぱり…)
次には言い様のない不快感が身体中を巡った。
「ミサさん、この子は…」
「成康さん!!」
ガツン!!
急に短髪の男が成康の肩を掴んだ。
「お前か!!ミサの新しい男は!?」
小さな店に圧のかかった太い声が切り裂いた。
「……誰だ?」
「マモル!」
ミサが立ち上がった。
「お前のせいでミサは俺と別れるっていいやがった。お前さえいなければ!」
マモルと呼ばれた男性は成康の顔を殴った。
その拍子に成康は隣のテーブルぶつかり、グラスが割れて散った。
「こいつがいなければ!」
男は再び成康に殴りかかろうたした。
「やめろ!」
雄大は反射する様に男の腕に飛びついた。
「何だこのガキ!邪魔だ!」
男の腕は太く、雄大はバシンっと弾き返され、床に倒れ込んだ。
倒れた時にガラスの破片が左目の近くと左腕を擦った。
「…っ!!」
「おい!!」
ガシャガシャガシャン
大きな音とミサの声がして、雄大が目を開けると成康が男の胸ぐらを掴み、殴ろうとしていた。
雄大は急いで起き上がり、重くなった片目を何とか開きながら、成康の腕に飛びかかった。
「成康さん、駄目です!!」
怒りで我を忘れた様に息の上がった成康は、雄大の顔を見て、ようやく力を抜いた。
すると男はドンっと成康を後ろへ押した。
バランスを失った成康は、後ろへと尻餅をついた。
「テメェが悪いんだ!テメェが!俺のミサを孕ませやがって!」
「成康さん!」
「もうやめてよ、マモル!!諦めてよ!」
「お客さん、もう警察呼ぶよ!」
雄大がそばにしゃがむと成康はふふっと笑った。
「成康さん…?」
「諦めることはないよ。」
店の中にいる人みんなが成康に注目した。
「ミサさんの中にいる子どもはあんたの子だ。」
「えっ?」
「えっ?」
全員がキョトンとする中で、ミサだけが青い顔になった。
「何言っているの?成康君の子よ。」
「違うね。」
成康は脇腹を押さえなが立ち上がった。
「悪いけど、色々調べさせてもらったから。」
口の端を切ったのか、成康は唇に血を滲ませて、冷たい目でミサを見下ろした。
「君から電話を貰った時から嫌な予感したんだ。子どもが出来て、俺の子どもだって言われた時はビックリしたよ。」
「だってそうだもん….」
成康はふっーと息を吐いた。
「そんなハズないって、俺自身は確信していた。でも君はしたたかだし、嘘が上手い。俺の付き合ってる人の事とかも聞いてきた。このまま、俺の好きな人にまで危害を加えられたら困る。君は交友関係も広いからね。」
成康は不意に雄大を見つめて、傷ついた様な顔で左目の近くの傷を指で撫でた。
「だから証拠が欲しかったんだ。2度と俺の目の前に現れない様にするために。」
「しょ…証拠?」
ミサは不快そうに顔を歪めた。
「産婦人科の診察券の予定日を見て、俺と付き合っていた時期と逆算すると確かに合わさった。」
「じゃあ……」
「でもその頃、ここにいる彼と半同棲もしていたね。」
成康がミサとマモルを見た。
「!!」
ミサは硬い顔をしていて、マモルはまだ状況が飲めないのかボンヤリしていた。
「あ、貴方と別れてからよ…」
「悪いけど、君の携帯の写真とかスケジュール帳を見させてもらったよ。彼と一緒に写っている写真の日付を見ると俺と付き合っていた時期と被るし、君が会わせてくれた友だちにも教えてもらったよ。彼とも付き合ってたって…」
「じょあ…」
雄大が口を開こうとすると、ミサは威嚇する様にガラスを踏み割った。
「でも…貴方とも付き合っていたし!そんなの証拠にならないわよ!こんな男、付き合ってないわよ!」
雄大がビクッとすると成康は雄大の背中に手を添えた。
「でも俺たち、身体の関係無かっただろう?」
店内中がシーンもなった。
「えっ?」
「だって君とは2人っきりでいた記憶も無いし、俺はすぐに雄大君に会って、君とは別れたし。君に指一本でも触れる事は無かったよ。」
「そんな……」
「行こう、雄大君。」
成康は雄大の肩を叩いた。
「ちょっと待ちなさいよ!」
成康は立ち止まって、ミサに振り返った。
「子どもは素晴らしいと思う。俺も少しは幸せな気分になれたよ。でも…」
成康はようやく理解したように立ち上がった男の方を見た。
「君の邪で、浅はかな考えで、彼と子どもを引き裂くの?彼は君のことが好きなんだ。もう少し、自分以外の人の事も考えなきゃ。もう君たちは1人の身体じゃないんだろう?」
見上げる成康は優しい顔で2人に笑いかけた。
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