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後輩の行動
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4日前、バイト先に行くと、先輩が左目の横に絆創膏を貼っていた。
彼は早番だったので、入れ替わりで言葉も交わせなかったけど、小さな顔に絆創膏が目立っていた。
それなのに彼は何故か嬉しそうで、あんなにボロボロに泣いていた事は無かったかのように俺には触れなかった。
だから気に食わなかった。
「椿さん。」
「うわぁ!!」
しゃがんで紅茶の補充をしていた雄大は持っていた箱を盛大に落とした。
「大丈夫ですか?」
するり手が伸びて、ぶちまけた箱を拾い上げてくれた。
顔を上げると長い睫毛を伏せた、上村の顔があった。
「う、うん。」
雄大はすぐに顔を背け、急いで箱を拾った。
「……」
「ここに並べればいいですか?」
「あっ…うん。。」
(どうしよう.……)
あの祭り以来、上村とはシフトが被らなかったのをいい事に雄大は極力顔を合わせないようにしていた。
引き継ぎがある時は西川に伝達し、上村の事は野上の担当する所をやってもらうように野上にお願いした。
(しかし……)
いつまでもシフトが被らない筈はないのだ。
「はい。」
目が泳いでいた雄大の目の前に手が差し伸べられた。
「……?」
「それ、渡してください。」
「あっ…ごめん。」
「あっ、この角潰れたのは椿さんの買取ですからね。」
「うっ……はい。。」
雄大は大人しく持っていた紅茶の箱を差し出された手に置いた。
(よかった…普通だ…)
いつもと変わらないつっけんどんな上村にホッと息を吐いてた。
「これで終わりだな。ありがとう。」
雄大が立ち上がろうとするとグンっと右の手首を掴まれ、立ち上がれなかった。
「!!?」
真っ直ぐ上村の目が強く自分を見てくる。
スッと上村の左手が顔に近付いてきたので、雄大は顔を後ろに引いて、目をつぶった。
「取れてる…」
「??」
そろそろと目を開けると上村がいつもの無表情で雄大の左目の近くを指で触った。
(あっ…絆創膏…)
上村が触っているのは貼られ絆創膏の事だとわかり、雄大はホッとした。
ピリッ!!
「痛っ!!」
急に貼られていた絆創膏を剥ぎ取れ、ビリビリとした痛みが左目まで入った。
「なっ!?」
雄大が顔に手を当てるより先に上村の手が雄大の顔を掴んだ。
「んっ!?」
「…どうしたんです?この傷?」
上村の顔が息がかかるくらい近かった。
「ここも怪我してるでしょう?」
今度は左腕を傷の入った上から握り締めた。
「っ…てぇ!」
「大声出さないほうがいいですよ。ここ売り場ですから。」
向こう側の通路を歩く音がした。雄大はギッと上村を睨んだ。
上村は雄大の睨みも無視するように顔についた傷をまじまじと観察した。
「あぁ…もう腫れもないし、かさぶたになっていますね。これなら絆創膏貼るよりも自然にしてたほうがいいですよ。」
「そうかよ…!?」
不意にペロリと傷口を舌で舐められた。
「な!?」
雄大はドンッと上村の身体を押して、急いで立ち上がった。
「…これ。」
ゆっくりと起き上がった上村が、唇を噛み締める雄大の手に角の潰れた紅茶の箱を置いた。
「………」
無言で受け取り、雄大はその場を去ろうとした。
「あのさぁー。」
後ろから不満そうな声がして、雄大はビクッとした。
「あの日のこと、無かったことにしてるの?」
「……」
「それともあの時の理由聞かれるのがイヤなの?」
「……」
「泣き虫、迷子を駅まで送ったのは誰かなー?」
雄大はぐるりと上村に身体を向けた。
「どうもその節は大変申し訳ございませんでした!あれはもう解決致しましたので大丈夫です!あっ、法被姿、大変良きお似合いでしたよ!!」
とりあえずベラベラ喋って頭を下げた。
(なんであんな恥さらしをこいつにしたんだよー僕!)
「?」
何も言い返して来ないので、雄大が顔を上げると真っ赤な顔をした上村が口元を手で押さえていた。
「法被…似合ってました?」
「あっ….う…,」
「ちょっとお兄さん。」
後ろから声をかけられ、雄大は振り向くと眼鏡をかけた年配の女性が手招きしていた。
「あっ、はい。」
雄大はそのまま上村に向き直らずにトトトッと走って行った。
「この木のボールなんだけどね…」
向こうの方で帰りがけの野上に対し、珍しくアタフタとして何度も首を上下する上村が見えた。
(どうしたんだ?あいつ?)
「これくらいのサイズをお願いしたいの。」
「ん…あっ、はいはい!これくらいですか!?」
笑うと目の横の傷が痛む。
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