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夏の帰り道
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「お疲れ様でしたーーー!」
「お疲れ様です。。」
「お疲れ様です。」
ガチャンと後ろでドアが閉まった。
「警備の人、元気いいですよね。」
(なぜ…….)
「まだ外は暑いっすね。」
(なぜこいつと並んでる!?)
雄大は横で携帯を見る上村を横目で見た。
「…なんですか?」
「いや!なんでも!じゃあ、僕、こっちだから。」
雄大が歩こうとすると上村は携帯から顔を上げた。
「あっ、俺もこっちです。今日はレンタルビデオ店行くんで。」
「!?」
「こんな道、歩くんですか?灯少ないですね?」
「そうかな…」
「あっ、パトカー!椿さん、補導されますよ。」
「20歳超えてるし!」
「こんな所にラーメン屋ある!行ったことあります?」
「ここめっちゃ不味いんだよ…」
「じゃあ今度食べてみて下さい。」
「だから不味いって言ってんだろ?」
「あっ……」
横の公園で花火をしている人がいた。
キャッキャッという女の子の声と「おおっ!」と太い声が複数聞こえ、強い光ともくもくと上がる白い煙。
「あの日…ありがとうな。」
花火の光を見ていたらポロリと口を開いていた。
「……いいえ。」
「あの時の僕、テンパってたし、変なお面かぶってたし、なんかボロボロだったし……すげー恥ずかしかった。。」
「えぇ、変なお面でした。」
「あっ、アレは僕が選んだわけじゃないならな!」
雄大が拳を向けると少し微笑んだ上村の横顔があった。
しばらく2人は楽しそうにロケット花火、パラシュート、ねずみ花火などをする姿を見ていた。
「あの日、花火ちゃんと見ました?」
上村は花火に目を向けたまま口を開いた。
あの日の花火を思い出すと2人の姿が思い浮かぶ。
(本当に2人は切れたんだろうか…?)
成康は滅多な事で顔に出さない。それが今回の事でよくわかった。
「俺は見てないんです。」
雄大の言葉を待たずに上村が答えた。
「僕の…せいだね。」
雄大をなだめていたせいで、上村は花火を見れなかったのかと思うと、シュンとしてしまった。
「あぁー、お盆、実家帰るのやめようなー。」
急に上村は大きく背伸びをした。
「話変わるの早いね。。いや、帰りなよ。お家の人待ってるよ。」
上村は雄大の顔の位置に少し屈んだ。
「だって、お盆の間はあいつが絶対来ないんでしょう?」
「あ、あいつ….いって…」
雄大は後ろに下がると電信柱に背中をぶつけた。
「あいつの邪魔は絶対入らないし、椿さんを堂々と誘えるわけだ。」
後のない雄大に上村の手が伸びた。
「椿さんもいつも来るかわからない人を待って、想う必要ないんだ。」
カッとなって、雄大は上村の手を払った。
「僕と成康さんは付き合ってんだ!」
上村は冷たい目で払われた自分の手を見つめていた。
「僕、帰る…」
雄大が上村を払うように背を向けて、歩こうとした。
「それって…好きって言われたから?」
(えっ??)
「会って間もないけど、付き合ってって言われたから?」
「違う!僕も…」
上村が一歩雄大に近づいた。
「じゃあ、俺が先に好きって言ったら、付き合ってくれた?」
「なっ…」
「好きになってくれた?」
薄暗い街灯に照らされても上村の強い目は、雄大に恐怖さえ与える。
「お、お前は僕が好きじゃないって言っただろう!?」
雄大は両手で拳を作り、胸の前で構えた。
「あぁ…今は好きですよ。この前みたいに泣いたり、すがったりして欲しいですもん。」
「はぁ?」
「まっ、検討してください。俺たち、身体の相性はバッチリだと思いますよ。」
「はぁっ!?怒!なに言って…」
急に顔を持ち上げられ、雄大の口は塞がれた。
「んっ、んーー」
雄大の唇に強く吸いつかれた。
痛くて、熱いキスはとても長くて、唇が腫れてしまうかと思った。
雄大は何とか力を込めて、思いっきり上村の足を踏んだ。
「いっっ!」
「ば、馬鹿やろ!何すんだよ!」
雄大は口を押さえ、後ろに下がったが、さらに上村が近づいた。
「だから身体の相性を…」
「相性なんてあるか!」
「椿さん。」
真剣に見つめられ、雄大はゴクリと唾を飲んだ。
「相性は大事ですよ。」
「はぁ?」
「童貞の椿さんにはわからないでしょうけど、」
「ど…童貞じゃねぇし!」
「はいはい。」
「スルーするな!」
「はいはい。同性同士でセックスする方法、知ってます?」
「関係ない…….」
雄大が顔を背けるとドスンと上村は雄大の後ろの電信柱を叩いた。
「痛いんですよ、男性同士は。」
「なん…」
「ちゃんと調べたほうがいいですよ。」
上村はニヤリと笑って、雄大から離れた。
「俺とならきっと上手くセックス出来ますよ。」
「なっ…!!」
「まぁ、泣いて、すがってくれてもいいですけど。。俺は怪我なんてさせませんから。」
雄大はショックで何もいい返せず、ただ赤くなっていた。
「じゃあね、泣き虫毛虫さん。」
上村はチュッと雄大の額にキスをして、ふふっと笑って雄大から離れた。
「今度、花火して下さいよ。」
暗闇に消えていく上村に雄大は頭を抱えた。
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