アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
暑さの限界
-
「いらっしゃいませー。」
「いらっしゃいませ…」
太陽が真上に来た。
サーキュレーターがあるとは言え、暑さは30度を軽々と超えている。
「暑い…」
雄大は首に巻いたタオルで汗をぬぐい、生ぬるくなったスポーツ飲料水を一気飲みした。
「暑い…」
言葉といえばそれしか出なかった。
「300円でーす。」
目の前で爽やかに焼きそばを売っていく上村がいた。
頭にタオルを巻いて、褐色の肌に黒のシャツを着ている姿は、夏の男!っといった感じで、女の子にはたまらないんだろう。しかもそいつが焼きそばを作っては売っているので、意外と女性客も多かった。
「牟田さんじゃあるまいし、暑い中、女がこんなに食べれるのかよ。」
目一杯パックに詰まった焼きそばに輪ゴムをかけながら、雄大は呟いた。
が、少し離れた木陰で女の子達は上村を見ながら焼きそばをすすっている。
「….…うん。食べるよな。食べる食べる。」
女の子に目を合わさないように雄大は焼きそばを並べた。
「何、ブツブツ言ってるんですか?」
巻いていたタオルを取りながら上村が近づいてきた。
「あっ、いや!」
「法被、暑くないですか?」
言われると黄色い法被が更に重く感じる。
「大丈夫。いざとなったら裸に法被になるから。」
「ふっ、それ見たいけど、見せたくない。」
「何だよ….それ…」
喋りかけて、雄大ははっとした。
(あっ…)
背中のシャツが大きく汗で濡れていた。
上村は少し疲れたようにふっーと息を吐いた。
「上村君、少し休んで来なよ。」
「えっ?」
上村はタオルで拭いていた顔を上げた。
「ストックも結構作ってくれたし。お昼行ってきなよ。」
「昼飯ならさっき椿さんが作ってくれたのあるし。」
上村は大事そうに雄大の作った失敗作を手に取った。
「それは僕が責任もって食べるから!」
雄大は上村の手から取り上げようとしたが、またしてま失敗して、後手に隠された。
「いやいや。俺のですから。俺はこれがありますから。」
雄大は頭から湯気が出そうになった。
「わかった!!それはやるから!捨てるなり、笑いの種にするなりしてくれ!」
「これは大事に取っておいて…」
「腐るし!もう違うよ!とにかく、休憩してきていいよ?、スタッフルームで1時間、休んで来て!先輩命令!!」
「ここで椿さん見てるのが一番の休憩なんですが。。」
雄大は焼きそばのパックを一つ取って、上村に渡した。
「これ!店長に食べさせて、今の売り上げ状況を報告しといて!社員命令!」
「それまでここは?」
上村が不服そうな顔をしたので、雄大はふんと鼻息荒くした。
「僕1人でやる!」
「えっ?中学生に間違われて、補導されるかもしれないですよ。」
雄大はキィーと目を吊り上げた。
「社員証かけてるし!」
「大丈夫ですか?今から昼時ですよ。」
「大丈夫だし。忙しくなったら、牟田さん呼ぶし。」
プイッと雄大が顔を背けると上村が一歩近づいた。
「牟田さんは暑さにやられて、すぐ動かなくなったじゃないですか?焼きそばに汗めっちゃ入るし。」
「うっ……」
「すみませーん。」
テントの外から声をかけられた。
上村はじっと雄大を見下ろしていた。
「わっ、わかった!」
雄大はその目に耐えられず、顔をそらした。
「忙しくなったら上村君呼ぶから!」
そう叫ぶとすぐに頭をガシガシと撫でられた。
「了解。」
軽く口の端を上げた上村の手が雄大の頭から離れた。
暑い……
12時半
気温もピーク、人もピーク、雄大の料理キャパもピークに達していた。
「い、いらっしゃいませー。」
ストックは尽きて、上村の見よう見まねで焼きそばをかき混ぜた。
「焼きそば一つ。あれ?アルバイトかい?ちゃんと宿題はやったのかい?」
「ははっ…」
頭の薄い男性に言われ、雄大は薄笑いを浮かべた。
(こんな会話何度目だよ。)
汗が目に入り、上手く麺をひっくり返せない。
「あつっ…」
パーン
すぐそばで軽快な音楽が流れ始めた。
”今から広場にて楽しい水鉄砲大会を始めます。ご参加のお子様は…”
(水…)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
78 / 147