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混じらない2人
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「喧嘩は上村君と?」
箱を直しながら、ようやく成康が確信に触れてくれてホッとする自分がいた。
「はい.…」
”俺が先に好きって言ってたら…”
「写真がマズかったかな?」
雄大の手に黄色いカップが握らされる。
「写真…そうですよ、あの写真!データー消して下さい!」
「はは….そうだよね。しかし、雄大君に当たるとなぁ。」
成康があんまりにも淡泊に言うので、雄大は眉を下げた。
”好きになってくれます?”
ドクン
「どうしたの?」
成康が顔を傾けた。
分かりやすく激ししくぶつかってくる上村と分かりにくいけど時々、驚く事をする成康。
雄大は口を開いた。
「殴られました。」
「うん?」
「….上村君、泣いてました…」
「…」
成康は立ち上がり、持ってきた箱を部屋の端の引き戸に戻し始めた。
成康の後ろ姿。今だに彼のこと、何も知らない。
「好きだからって殴られました。」
何でそんな事言ったのか、頭では自分を理解できなかった。
雄大は発言した口を手で押さえた。
ピタリと成康の背中が動かなかった。
「ごめ…」
「泣いて、好きだって言われて、雄大君は心が動いたの?」
「えっ?」
成康は雄大から離れたまま、顔だけ雄大に向けていた。
「泣かれて、すがられて、心に響いた?」
今、目の前にいる成康の言葉は抑揚のない声で紡ぎ出されて、雄大は身を震わす。
「いえ….ちょっとびっくりしちゃって。。ゴメンなさい。こんな事、成康さんに言って。」
雄大は黄色のカップの液体を飲むが、味がわからず、手が震えた。
心臓が痛いくらい、ドキドキしていた。
”好きって言われたから…”
「僕は成康さんが好きですから。」
何でそう言ったかはわかる。自分で揺らいでない事をアピールしたかった。
しかし、成康は雄大から目を離した。
「俺にも上村君みたいにすがって、暴れて、全てをさらけ出せって?」
「そ、そんな…」
低い成康の声が恐く、雄大は狼狽えた。
「上村君みたいに嫉妬しろって?」
「違います!」
雄大はつい立ち上がった。
成康は同じ場所に立ち、雄大に背を向けた。
「ごめん…本当にごめん…」
無機質のような成康の声。
「僕、帰ります。すみませんでした。こんな夜に…」
雄大は深く頭を下げ、また汚れたままの借り物の服で玄関を出た。
バタン
硬い金属の音が背中で鳴った。
「……来て….くれないのかよ……」
夜風が頬に冷たく感じ、黒い空に浮かぶ黄色い三日月だけがそこにあった。
今の自分の気持ちが分からなくなっていたのは、随分と前からだったんじゃないか…
雄大は吐き出すように涙を流した。
バタン
振り返るとさっきまで傷ついたうさぎのように座っていた雄大はもういなかった。
成康ははぁっーと溜息をついてその場にしゃがみ込んだ。
「何で…あんな事…」
”好きだって言われて…”
「雄大はあいつ…上村が…」
成康は膝に顔を埋め、髪をぐしゃりとつかんだ。
「感情だけじゃ、動けなくなったな。。。」
淡い香りがしていた部屋が、ひどく冷ややかな空間になった。
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