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コンビニ
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何で追いかけてしまったのかはわからない。
もしかして違う人かもしれない。
でも一瞬にして目の端に捉えたその人を身体が追いかけていた。
「コンビニ…ですか?何か買う物があるんですか?」
成康は乱暴に車を停めた。
「う、うん!ちょっと…ね。すぐ行ってくるからちょっと待ってて。」
成康は助手席の宮崎の方を見ずにシートベルトを外した。
「いらっしゃいませー。」
後ろで自動ドアの開く軽快な音が鳴った。
雄大はその音にビクッとしながら、周りを見渡した。
(べ、別に悪いことはしてないし!)
雄大はもう一度、手を伸ばし”新発売!”と書かれた缶チューハイに手を伸ばした。
「もう20を3つも過ぎてんだから、夕方から呑んでもいいだろう!」
雄大は自分に言い聞かせるように呟いた。
外では買ったことのない缶チューハイの冷たさにゴクリと唾を飲んで、雄大はレジに向かった。
「あっ、カルパスも。」
途中、フックに下がった3本入りのカルパスを手にして、レジの最後尾に並んだ。
ピッ!
”年齢確認をお願いします。”
機械の高い音がして、レジの男性が気だるそうに雄大を見て、一瞬間を置いて口を開いた。
「…すみませんが、年齢確認できるものをお願いします。」
「あっ…」
ハッとした。今日に限って、財布に保険証を入れていなかった。
何か他に証明できるものがないかと鞄をかき混ぜていると後ろから「学生がお酒買おうとしてるみたい」というヒソヒソ声にしては大きな声が聞こえた。
雄大は耳まで真っ赤になるのがわかった。
「あっ…これはもうい…」
(誕生日にこんなのって…)
「あっ、これ、私がこの子に頼んだんです。」
不意に横から低い澄んだ声がして、ポンっと肩に温かい手の感触が触れた。
雄大はハッと顔を上げた。
整った横顔がにこりと笑っていた。
「すみません、私がトイレに行ってる間に会計してもらうように頼んだせいで….」
「あっ、そうだったんですね。」
「私の身分証でよいですか?」
「あぁ、大丈夫ですよ。」
先程と打って変わって、コンビニ店員はシャキッと態度をとった。
「おいくらですか?」
隣の成康はポケットから高そうな黒い長財布を取り出した。
「えっと、501円です。」
「えっ!?いや……」
雄大が口を開こうとすると成康は「んっ?」と首をかしげ、雄大に目配せしてきたので、雄大は黙って俯いた。
「じゃあ、丁度で。レシートはいいです。行こう、雄大。」
成康は買い物袋を受け取り、雄大の肩をポンっと叩いた。雄大は促されるままレジから離れた。
帰り際、成康は「遅くなってすみません。」と後ろのカップルににっこりと笑いかけた。
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