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誕生日の夕方に
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(何て言えばいい??)
雄大は完全にパニックに陥っていた。
この状況もこの場も全てが混乱していた。
ただ唯一、今、目の前に成康がいる事だけだった。
「あっ…ありがとうございました。」
雄大はぺこりと頭を下げた。
「あの….お金を…」
雄大は成康を見る事が出来ずに、そのまま財布を開いた。
すると財布を開く雄大の手を長い指の手が制止した。
「いいよ。それにこんな店先でお金のやり取りしてたら、おかしいと思われるだろう?」
雄大がガラス越しにコンビニの中に目を向けるが、外にまで注視するような、仕事熱心な人はいないように見えた。
「でも…」
顔を上げると優しげな成康の眼差しがそこにあった。
ドキリ
としたのは言うまでも無かった。
やっぱりこの前からの余所余所しい態度や自分の誕生日を避けるよな言動は、こうやってサプライズをするつもりでやってたんだ。
そうか期待せずにはいられなかった。
「もしかし…」
「加藤さん?」
ショートカットの可愛らしい若い女の人が、ピカピカのネイビーの車のドアから出てきた。
「どうしたんです?品物、買えました?」
カッと身体中から血が頭に上るのがわかった。
「どうもありがとうございました!!」
雄大はガサガサと財布から500円玉と1円玉を取りだし、乱暴に成康の手から缶チューハイの入った袋をもぎ取り、500円玉と1円玉をその手に乗せた。
「ちょっ…」
驚いてお金を返そうとする成康にくるりと背を向け、雄大は自転車に向かった。
「雄大くん!!」
自転車に乗ろうとする雄大を制止しようと成康は自転車のハンドルを握った。
「お金はいいって!」
(泣くな!泣くな!泣くな!!)
雄大は俯いていた顔をばっと上げ、成康を真正面に見据えた。
「何ですか?今度は缶チューハイの誕生日プレゼントですか?でもたか顔見知りの店員にそこまでしなくてもいいと思うますけど!」
「ゆ、雄大くん…」
「ほら、彼女待ってますよ。」
雄大が顎をしゃくると成康の手が緩んだ。
雄大はギュっと目をつぶり、ペダルに思いっきり力を入れた。
(泣くな!泣くな!泣くな!!)
「待って!雄大く…うわっ!!」
急に成康が力を込めた雄大の自転車の前に飛び出した。
ぶつかった反動で、雄大は顔から自転車ごと倒れた。
アスファルトが顔を擦り、ガツンと頭蓋骨まで響きそうな痛みが走った。
カラカラカラカラ
自転車のタイヤが回る音がする。
「加藤さん、大丈夫ですか!!?」
目を薄く開けるとクリーム色のパンプスが目に入った。
「大丈夫….俺は大した事ない。それより、雄大は…」
「そんな….この子が悪いんですよ!」
(そうだよ、僕が悪いんだよ….成康さんからのサインを気付かず、まだしがみつこうとしていたことが…)
「….そうだよ…」
雄大は痛む身体をじわりと起き上がらせた。
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