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10月の青い空
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秋晴れと言うのだろうか
その日は空が青く、でも夏の空とは違う濃い青
空気が少し冷たくて、突き抜けるような青空だった。
「お疲れ、雄大君。あれ?頬の傷どうしたの?目も腫れてるし。。」
「…何でもないです。」
「そっか…そうだ!雄大君、ごめんだけど5日と8日に遅番してくれない?」
「えっ?」
「いやー、上村君が今度の日曜に学祭があるらしいんだけど、その準備が全く終わらないから、今週は休み下さいって言われたんだよ。」
「じゃあ….上村君は今日もお休み?」
「うん。なんか急に大会実行委員に入れられたらしいよ。当日、遊びに来てって、食券とチラシをもらったよ。」
「…僕はいいです。遅番は引き受けます。」
「??あっ、ありがとう、ゴメンね。あとこれ、毎年恒例の勤務評価表。自己評価してあとで出してくれる?」
「…わかりました。」
スタッフルームに入ると大きく窓が開いていた。
雄大はA4サイズの勤務評価表をテーブルに置き、パイプ椅子をひいた。
「えっと…」
ボールペンを持って用紙に向かう。
”いつも気持ちの良い挨拶ができたか?1.2.3.4.5”
”掃除は隅々まで行き届いたか?1,2,3.4.5” etc…
「”3”と…」
”お客様とのコミュニケーションを十分に取れていたか?1.2.3.4.5”
雄大は持っていたペンを止めた。
(僕は….….僕の気持ちは…)
胸の辺りが重く、焼けるように熱くなった。
”雄大君の気持ちが…”
雄大はカッとなって、テーブルを叩いた。
「僕はいつだって、好きだったんだ!!」
胸が痛い、身体が痛い、頭が痛い。
「いつだって….いつだって僕は…あなたの事が…」
涙が溢れ、腫れた目が更に視界を遮る。
「ち、ちくしょう!!!」
テーブルの上にあった勤務評価表もチラシも食券も全て取り払った。
雄大はグスグスしながら、テーブルにうっ潰した。
「何で……こんな思い…」
上村の大学祭のチラシが払いのけた衝動で、青い空の下へとはらはらと飛び出していった。
雄大は勤務評価表を手に店長の元へと歩み寄った。
「雄大君、どうしたの?だいぶ顔が…」
「店長!」
雄大はまた一歩、前に進んだ。
「店長、僕、今年中でお店辞めされて下さい。」
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