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傷の治らない内
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夕方
もうすぐ1日が終わる。
とりあえず、今日のメンバーは店長以外は自分に関心がないのか、いつも通りの店だったので、雄大はホッと安心した。
(明日、パートの菊池さんが来たら、辞表の書き方とか教えてもらおう。店長は…何か言われそうだし。。)
雄大はすっと息を吸って、床に置いていた段ボールを持ち上げた。
歩き出そうとした時、店の前にズボンのポケットに手を入れ、睨むようにこちらを見る人がいた。
「辞めるって、どういう事ですか!?」
雄大は段ボールを倉庫の端に積み上げ、1つため息をついた。
「辞めるって事だよ…」
「そんなんじゃあ、理由になりませんよ!」
腕を掴まれて、雄大はその手を弾いた。
「上村君には関係ないだろう!?」
「………」
悔しそうに拳を握る上村の手だけが目に入る。
「…なんで…急に…」
「急じゃないよ、一応12月まではいるから。心配しなくても仕事の引き継ぎはするよ。だから休みの日まで出てこなくてもいいよ。」
怒ってくれてもいい、嫌われてもいい、そんなやけっぱちな思いで、冷たく言い放った。
「じゃあ、僕はもう上がりだから…」
雄大は上村の顔を少しも見ずに倉庫のドアに向かった。
「……あい……せい…」
小さく呻くような上村の声が後ろでしているのを無視して、ドアに手をかけた。
「!!!?」
急に後ろから手が伸びて、雄大の口元を押さえられた。
カチリ
押さえられた手と反対の手が目の前で倉庫の鍵を閉めた。
「ん!?ぐっ……」
暴れも手は離れず、そのまま目を押さえられ、振り払おうとして、雄大は転倒した。
「いっ!!」
冷たい床に背中を強く打ち付け、顔を歪めた。
この前、アスファルトで打った頭が再び痛む。
「いってぇ…」
目を開けると自分の上に上村が馬乗りになっていた。
「うえ….むら…」
怒りしかない上村の顔。
雄大は頭から真っ青になった。
「あいつのせいなのか!?」
上村の怒りに成康の身が心配になった。
「ち、違う!ただ僕はリセットしたくて….」
「あいつのせいなんだろう!?だったら、その傷は何なんだよ!?」
「違う!成康さんは……」
「なんであいつなんだよ!畜生!」
バンッと雄大の横の床を叩いた。
「だって……だって…」
「俺じゃ駄目なのかよ?!」
その強い目に雄大は泣きそうになる。
「僕は….上村君の気持ちには….応えられない…まだ…無理だよ。」
「.……」
「じゃあ…じゃあ、なんで僕なんだよ!」
雄大が上村を払おうと腕を上げた時、近くの段ボールに手が当たった。
コロコロコロコロ
1つの茶色のガムテープが転がってきた。
「俺は……初めてあんたに会った時から…」
雄大はハッとして、ガムテープを取ろうとしたが、先に上村に取られた。
「あんたをメチャクチャにしてやりたいって思ってたんだ。」
ビリビリビリとガムテープが剥がれる音がする。
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