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又聞き
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男はライトグレーのカーディガンの中に黒いV字のシャツを着て、藍の濃いのジーンズを履いて、辰成を若干見下ろしていた。
「少し話してもいいかな?」
「いえ、仕事中ですなんで。」
憮然と答えると男は「あぁ。」と呟き、辰成の横でキョロキョロする女の子を見た。
「そうだね。じゃあ、少し時間を取ってくれる?」
いつものここに来る時の穏やかな感じとは違う。
有無を言わさない強い口調に辰成はよろけそうになった。
「君、ちょっと上村さんと話をしたいから、何かお探しなら違う店員さんに尋ねてくれる?」
男は辰成の横の女の子ににっこりと笑った。
「えっ….あっ…はい。。」
女の子はおずおずとしながら、後ろへ下がっていった。
「どういうつもりですか?…加藤さん。」
さっきまで笑っていた加藤から笑顔かけらもなくて、女の子を去っていくのを見ていた。
「君の方こそ、どういうつもりなんだ?」
加藤は冷たい顔で辰成に顔を向けた。
「どういうって?」
辰成は憮然とした顔を崩さず、はたきを持った手で腕を組んだ。
「雄大君に痣を作ったのは君だろう?」
辰成はハッと顔を上げた。
(何で…この人が…?)
「えっ…?まさか椿さんが…?」
「彼は君の事は話してないよ。」
強い口調が辰成を遮った。
「じゃあ……」
「昨日、雄大君に会ったんだ。」
「…えっ?」
”会ったんだ”その台詞に嫉妬にも近い感情が疼いた。
「手首に紫の痛々しい痣がぐるりとできてて、酷い腹痛に苦しんでたよ。」
チクリと胸が痛んだ。
(俺のせい…)
「…椿さんは何か言ってたんですか?」
聞かずにはいられなかった。
例え聞く相手が聞きたくない相手でも。
加藤はため息を吐いて、眉をひそめて下を向いた。
「何も…ただ病院に行きたくないけど、何をどうしたらいいのか分からないっからって。。」
加藤は椿の辛さを自分の事のように深く刻んだ。
「……俺、見に行きます。」
辰成は居ても立っても居られず、胸のネームプレートを掴んだ。
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