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1人の痛み
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「はい…では…」
ピッ
「俺、何してるんだろう。。」
成康は項垂れながら、顔を歪めた。
「いっっ!」
顔を歪めると口元が切れるようなピリッとした痛みが走る。
頬に手を当てると腫れて、熱を持っているのがわかる。
日曜日、人が人を連れて、人の波に乗って左から右から成康の前を歩いていく。
エスカレーターの下の椅子に座った成康のいる空間だけポツンとしていて、まるで硝子の箱に入っている気分だった。
(あぁ…これが孤独か……?)
部屋に1人でいる時にも会社の残業の時とも違う、誰かに慰めて欲しいのに今の自分はその相手は…もういない。
家族、恋人同士、友達同士….前を行き交う人全てが羨ましく思う。そして自分が惨めに思える。
「……」
無意識に着ていたカーディガンの前を合わせ、背中を丸めた。
「帰ろう…」
顔が熱いし、目が腫れてるのか、しばしばする。
立ち上がろうとした時、ふと向かい側のエスカレーターに目がいった。
(あっ…)
顔を左右上下にふり、慌ただしく栗色の髪を揺らす人。
その姿に心が揺れり。
「ゆ、」
成康は声を上げそうになる口を手で押さえた。
何かを探すように首を振り、焦るようにエスカレーターをピョコピョコと駆け下りる姿。
その姿を愛しいと思った。
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