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21時の時計台
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「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」
雄大は膝に手を置き、肩で息をした。
「あと…少し……」
雄大は大きく息を吸ったが、胸でつっかえたように息を吐いた。
顔を上げるとモールの駐車場から、追い立てられるように車が出てくる。
(まさか…)
時計を見ると21時を指していた。
「くっ…!」
雄大は最後の力を振り絞り、走り出した。
時計台は21時10分を指していた。
木に設置されたLED電球のイルミネーションは、すっかり消えて、辺りは真っ暗だった。
「いつもなら…映画館が終わるまで点灯してるのに…」
開店当初からある大きな木は、暗闇の中で点かない電球をぶら下げて、雄大を見下ろしていた。
「グスッ…」
鼻水と涙で目の前が歪んで見えた。
「なんで僕、ここに来たんだろう?」
雄大は袖で鼻を拭って、木を見上げた。
「僕は…会いたいです!!だから、成康さんに会わせてください!んでもって言いたいんです!なんか分かんないけど、成康さんじゃなきゃ、駄目なんです!!」
冷たい風を切って、自分の声が清々しく聞こえる。
背が高かったり、かっこよかったり、優しかったり、笑顔が綺麗だったり、でもそれ以上に初めて会った時から、惹かれている。今もこれからも。
雄大はぎゅっと目をつぶった。
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