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足立家の秘密
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俺、足立千晴はヤクザの家に生まれ育った。
自分で言うのも何だが足立組はなかなか立派な組だと思う。
裏社会では闇に浸かる人間は大抵知っているような巨大組織だ。何でも俺の親父がやり手だったらしく一代で爆発的な成長を促したんだとか。
まあ、その親父は急にぽっくり逝ったんだが。引き継いだのは俺の兄だった。
兄の菊次は父の才能をちゃっかり受け継いで、着々と組を巨大化させていってる。残念ながら俺には裏を生き抜けるスキルは与えられなかったみたいだ。正直安堵してる。
よくもまあ継ぐ気になったものだ。年の離れた兄を見て思う。
俺は絶対やだね。普通の日常ってものを送りたい。
小さいころからいかついおっさん達に囲まれて過ごして、思春期に入ったころから異変に気付いた。
普通は命を狙われたりしないし、浚われそうにもなったりしない。ましてや家の中を血まみれの男が闊歩したりしない。
ただでさえ精神が崩壊しそうな光景なのに、顔面が厳ついおっさんだらけとかもう勘弁してほしい。せめてダイナマイトなバストの美女を頼む。オールチェンジで。
名が知れるってのは厄介なことで。足立組を知っているクラスメイトがいたのも厄介だけど。そいつのあだ名が「おしゃべりスピーカー」だってのも厄介だったな。
すぐさま俺が足立組の人間だってばれた。小学校に入学して1週間もたたなかった。
俺のことを言いふらしたおしゃべりスピーカーのその後はよく知らない。急に転校していった。兄貴が何らかの圧力をかけたんじゃないかなって今になって思う。
転校したせいで、俺が恐れられる存在であるべき事実が濃くなった気がした。
だからか俺は小・中学時代友達らしき友達がいなかった。死にたい。
ぼっち最高とか言えるほどメンタルは強くない。寂しかった。
一人で食う給食なんて噛み終わった後のゴムみたいな味しかしない。
高校に入ってから、極力俺が足立組の者だとばれないように気を使って生活した。
その甲斐あってか、友達って呼べるような人間関係も増えたし、時々遊びに誘われたりした。これぞ日常ライフ!満喫すべき学校生活!
このまま何事もなく早く卒業して、闇の世界なんて薄暗いところから逃げ出したい。
暖かい日光があたる日当たりのいい場所に家を借りてのんびり過ごすんだ!
俺の人生設計はだれにも邪魔させない。
これからがスタートなんだ。血とぼっちから解放された光の道が眼下に広がっている。
過去なんてなかったことにして、俺は前へ進むんだ!
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