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13.エロ悪男に愛されちゃって-エピローグ
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撮影が終わった後は、本業の仕事がたくさんあった。画面を見ながらの仕事は久しぶりで、最初は何度もリテイクを連続してしまい、その日一緒の仕事場だった祝には迷惑を掛けた。でも、祝は「大丈夫だ」と言ってくれて、ユキジはその後はもういつも通りに熟す事ができた。
「おい」
打ち合わせが終わり、事務所から出てきたユキジを、二人の男が待っていた。
一人は黒いサングラス掛けた壱成。そして、もう一人はラウルだった。
「なんで二人がここに?」
ユキジは何故二人がここにいるのか不思議で、驚いた顔を向ける。
「俺はたまたまオフだったから迎えに来た。そしたら、コイツがいた」
「こ、コイツって……」
ラウルは壱成にコイツ呼ばわりされて、ふざけんなって顔を向ける。そんなラウルに怯む事なく、壱成がユキジの隣に来てくれる。
「帰るか」
「う、うん」
「ス、STOP!」
けれど、それをラウルが止める。
「お、オレ今日帰国すんだ……」
「へー。そうなのかー」
興味がない壱成。
「これ、youにって……」
そんな壱成を一度睨め付け、そして、ユキジに向かって一枚の写真を渡して来たラウル。
「これって……」
その写真は、生まれたての赤ん坊の写真だった。けれど、それはガラス越しの写真で、少しだけ反射して写りはそこまでよくはなかった。
「オレ、嘘ついた。Dad(親父)はyouの事や母親の事を捨てたわけじゃない」
「え……?」
「本当は一時帰国して、両親に日本に永住する話しをするつもりだったんだ。でも、それはできなかった……」
「嘘……」
「嘘じゃない。なら、そんな写真ずっと持ってない」
確かにそうかもしれない。
でも、それを簡単に信じられるほど、ユキジは子供ではない。
「裏見てみろよ……」
そう言われ、ユキジは見る。すると、そこにはユキジの名前と謝罪の言葉が日本語で書かれていた。
それを見て、涙が込み上げてしまうユキジ。
「これ、日本でもし、youに会ったら渡してくれって言われてた……」
そして、それを見て、段々と今までの痼が解けて行くユキジ。そんなユキジに、壱成が優しく言葉を掛けてくれる。
「良い人そうじゃん。お前の親父さん」
「うん……」
一度も会った事はないけれど、その写真からは、赤ん坊と離れる事を惜しむような気持ちが伝わった。
父親の中で、もしかしたらこれが最後かもしれない。そう、思っていたのかもしれない。
「こっち来たら……顔出せよ」
「うん。ありがとう、ラウル」
「!」
「?」
ラウルの顔が赤く染まるのが見ていて分かった。
それを見て、壱成がラウルからユキジを少し遠ざける。それに気付かず、ラウルは言うか言わないかを悩んだ末の結果をユキジに言った。
「オ、オレ。諦めたわけじゃないから」
「え……?」
「brotherって認めるけど……オレ、ユキジの事、すげー愛してる」
「え!」
「何言ってんだ餓鬼」
「餓鬼じゃない!」
ラウルは壱成に餓鬼と言われ腹が立ったのか、壱成に詰め寄る。
そんな二人を、ユキジは間に入り止めようとする。
「ちょ、ちょっと二人とも……」
「ユキジは俺のだ。お前はとっとと国に帰れ!」
「そんなの知ってる! でも、オレにだってチャンスくらい……」
「ない」
「ないわけない!」
二人はそんな攻防戦を繰り広げ中々落ち着かなかった。
「ユキジは俺の嫁だ」
「ヨメ?」
「……ならお前は、俺の義理の弟になるのか?」
「そっか……じゃねーよ! ふ、ふざけんな!」
そんな話しになった途端、ラウルが壱成から距離を取り始める。
そして、顔を更に赤くし、フンっとそっぽを向いた。
「なんだそれ……」
そう言って、ユキジを見詰める。
「ラウル……? え?」
チュッと頬に優しいキスをされた。それは、隙を見たラウルからのキスだった。
「おまえ!」
「フンっ。youが変な事言うからだ!」
そう言って、側に置いていたキャリーバッグを持ち、ベーッと舌を出して帰ろうとするラウル。
そんなラウルに、ユキジは感謝の言葉を述べた。
「ラウル。ありがとう」
「!」
「また、日本に来たらご飯行こう。お、お兄ちゃん待ってるから」
まだ兄としての自覚はないけれど、でも、今はそう言いたかった。
「き、気が向いたらな……」
そう言ったラウルの顔は真っ赤になっていて、口元の端が上がっていた。
それに、目元からな涙のような物もチラッと見えた。
「それに、オレはまたここに戻って来る。その時は覚悟しとけよ。こんな男よりもオレは良い男になってるはずだぜ」
「言うだけはタダだ」
壱成はラウルのその言葉に笑っていた。それは、さっきとは違い、ライバルへと向ける目ではなく、優しい物だった。
ラウルは一度だけ右手を上げ、ヒラヒラっと軽く左右に振り、キャリーバッグを引きながら帰って行った。
「そこまで悪い奴じゃなさそうだな」
「う……ん……」
「生意気ではあるけど」
「ふふっ。そう……だね……」
でも、最初の印象よりも遙かに良くなった。
それは、弟だと認めたからだろうか。
「さ、帰るか」
「うん」
ユキジは壱成にそう言われ、二人でラウルとは反対の道を進み始めた。
これから先も、ユキジは壱成と共にこうやって誰かとは反対の道を進んで行く。
二人なら怖くない。
だって、こんなにもエロ悪男に愛されちゃってるんだから。
「壱成」
「?」
「愛してるよ」
「!」
ユキジは、ふふっと照れながら笑い、人目が無い事を確認しながら、自分よりも一回り大きなゴツゴツした手を掴んで握った。
そして、その手を壱成も握り返してくれて、二人はこんな風に素敵な時間を、何年も、何十年も共に過ごして行くのだった。
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