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2.失恋してもやっぱり好き-3
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ユキジは思い切り蛇口を捻り、勢いよく水を出した。そして、その水をすくい上げて顔をバシャバシャと荒く洗う。
ユキジの気持ちは顔を洗ってもスッキリしなくて曇る一方。
モヤモヤが晴れない。
「秋幸さんか……」
祝の恋人である秋幸が、性格が悪い人間ならば良かった。
でも、秋幸はとても良い人だった。
こんな自分に話し掛けてくれる。他の人間と同じように接してくれる。
もし、ユキジの目が青い事を秋幸が知ったとしても、秋幸は祝と同じように、何も変わらず接してくれるだろう。
そうなってはいないのに、想像がつく。
「良い人だな……」
それは、秋幸がどことなく祝と似ているからだ。顔や形、声、そんな部分ではなく、心や雰囲気と言った見えない部分が。
「優しくて……温かみのある人……」
そう。その部分が似ていた。
だから、ユキジは祝を好きになった。その優しさに触れ、救われたから。
そして、祝も、秋幸の優しさや雰囲気に惹かれ恋に落ちた。
それは、偶然ではなく必然だったのかもしれない。そう思うほど、二人はお似合いだった。
「羨ましいな……」
心の声がぼそりと口から出る。
それが、今の本音だった。秋幸の性格が、優しさが羨ましかった。そして、祝と付き合っている事も羨ましい。
けれど、それと同時に、未練タラタラの自分が嫌になる。
諦めなきゃいけないのに、諦めきれない。そんな自分が惨めにさえ思えた。
(あ……また泣く……)
ユキジは洗ったばかりの顔をもう一度荒く激しく洗った。けれど、心はまだ晴れる事はなく、同じ事の繰り返しだった。
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