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5.好きな人とのキス-4
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どうしていつもそうやって勝手に行動するのだろう。ユキジの気持ちを無視して。
「な、なんでキスなんかするんですか……」
ユキジには簡単にキスができる壱成が全く理解できない。仕事で何度もしていたら、麻痺してくるように誰にでもキスができるようになるのだろうか。
「あんたの中のアイツを消す為」
「え……?」
「今、あんたの頭の中は俺だけだ」
「そ、それはそうですよ。あっ、あんな事されて……」
「だろ。もう、緊張なんてしてないはずだ」
「あ……」
「アイツとのキスもなんとかなるよ」
その言葉は優しかった。本当に、ユキジの事を心配している声だった。
壱成は祝とのキスに緊張しているユキジの心を解そうとしてくれたようだ。
でも、キスじゃなくても良い気がする。
「き、キスじゃなくて……ふっ、普通に何か言ってくださいよ。頑張れとか、大丈夫とか……」
「そんなこと言っても伝わらないでしょ。これが一番あんたの心を逸らせる良い方法なんだよ」
「でも……」
「あと、俺がしたかったから」
「え……?」
「来宮さんとしたかったから……」
「なっ……」
なんでそんな事を急に言うのだろうか。そんな嘘を言われて動揺しない心をユキジは持ち合わせてなんかいない。
免疫がない。
「なん……」
なんで。そう言おうとした。けれど、スタッフが呼びに来てその先が言えずに終わる。
いつもタイミングが悪い。
「冬椰さん、来宮さん。準備お願いします!」
「あ、はい……」
慌てて呼びに来たスタッフの後を追うように、ユキジも席を立った。
すると、その右手を壱成がガシッと掴む。
「好きになんてなるなよ」
「え……?」
「あんな奴にまた恋なんてするなよ」
「な、何言って……」
「キスしても、心は引き摺られるな……」
「冬椰く……ンッ……」
またキスをされた。次はフレンチのキスだ。
(なんでキスなんかするんだろう……)
優しくて、心配してると言っているような一瞬だけのキス。そのキスに、ユキジは翻弄されてしまう。
まるで、行くなと言っているようなキスだった。
「頑張れなんて言わないから」
「え……?」
「冬椰さん、先に撮る事になったので現場Bのほうに変更になりました。その次に来宮さんが秀野さんとのシーンを撮る事になったので、全体の控え室で待機していて下さい」
「は、はい。分かりました」
ユキジが来ない事を心配したスタッフが顔を出し、それと同時に壱成はユキジの腕を離した。
スタッフには何があったのかは気付かなかったらしく、疲れ切った顔のままでいた。
そんなスタッフに頭を下げて、ユキジは壱成の顔を見ずに逃げるように壱さんよりも先に部屋を出た。
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