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クリスマス5
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【side温和】
マンションに向かう途中、本社の前で榊原さんを見た。千の様子を見ていたのだろう
俺は千を風呂に入れると、携帯を取り出し電話をかけた。
「はい。榊原です」
電話の相手は、すぐに応対した。
「一体、何をお考えですか?榊原さん…」
俺は怒りが収まらない
「本社に行くよう頼んだのは千でしょう。ですが…あんな場所で、独りで待たせるなんて…あんなに冷たくなって風邪を引いたらどうするんです! 」
「申し訳ありません」
静かな声に冷静さを取り戻す。
「…なぜ、私に連絡してくれなかったのですか?」
「……千之助様は小さい頃から、自分のお気持ちをおっしゃいませんでした。だから、私は千之助様のお気持ちを優先したかったのです」
「?…どういうことですか?」
「頼まれたのですよ。君の迷惑になりたくないから、連絡しないで欲しいと。あまりにも必死で…
ですが今回は私の失態です。申し訳ありません」
冷静になって考えれば、榊原が軽い気持ちで、千を独りにする訳がないのだ…
「私の方こそ、言い過ぎました。申し訳ありません。
榊原さんも、あそこにいたのでしょう?
風邪…引かないようにして下さいね」
榊原が笑った気がした。
「はい、ありがとうございます」
電話を切り、千の為にスープを作っていると、カチャッとドアが開く音がする。
風呂上がりの千之助を見ると、顔色は戻り、頬は桜色に染まっていた。大きな瞳はいつも潤んで俺を煽るけど、今日は真っ赤に充血して、悲しげに涙を溜めている。
そういえば、泣いてたっけ…
頭に血が上って、理由も聞いてなかったな…
俺は千之助をそっと抱き締めた。
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